2024年09月22日 10時37分

《おおすみ雑記 》

近代農業の金科玉条の常識に疑義を挟んでみる

 大隅半島の特性ってなんだろう…と考えた時に、この地域の歴史の勉強は欠かせない。
 古代の史跡や遺跡発掘なども見に行ったりしているが、そういったところで話題になるのが、1万7000年前から1万年以上も長く続いた、争いの痕跡が無いとも言われる日本の縄文時代。

 そこでは狩猟だけでなく、木の実などを計画的に植樹して、それなりの豊かな食を保っていたという。発掘された地層などから何を食べていたか、どんな平和な生活をしていたか分かったとされている。

 何を伝えたいかというと、いろんな苦労はあったとは思うが、施肥をしないで、特に化学肥料を使わないで私たちの食が維持されてきた暮らしが長いことあった。

 もちろんその当時の人口を考えると単純に比較はできないのだが、近代農業と言われるのは、リービッヒによる化学肥料、さらには空気中に無限にある窒素をアンモニアに変える技術など、ここ数百年、人口の増加とともに農業が産業化されてきた時代。

 そして大量生産大量消費、今は大量に食品を廃棄している時代ともなっており、私たちはここに至って農や食に対する認識を今一度、考え直してみる必要があると思う。

1万年以上続いた人や自然に優しい農業、食

 そこで、話が飛び過ぎるかもしれないが縄文時代。
 DNA解析など詳しい調査の結果、日本独自の文化を持った縄文人のルーツは、タイ南部、マレーシアとの国境近く「マニ族」だという。
 縄文時代というと、青森の三内丸山遺跡など東北というイメージが強いが、タイ南部ということを考えると、陸というより海から黒潮に乗って伝わった文化がまずは大隅半島にぶつかり根付き、1万年近くかかって東北やアイヌまで北上していった。東北や関東地方の縄文文化は、晩期の3200年前~2400年前とも言われている。

 紀元前12000年頃から紀元前4000年にかけて、今のマレー半島東岸からインドシナ半島に接する大陸棚が、約8000年間にわたる海面上昇により海底に没したとされるスンダランド。
 そこから大量の難民が黒潮に乗って日本にも押し寄せてきた。

 地球規模での縄文人のルーツはタイ南部だが、日本での縄文人のルーツは大隅半島。ただ、約7300年前の鬼界カルデラ大噴火、約5500年前の阿多南部カルデラの破局大噴火により、薩摩半島も含め大隅半島の縄文文化の多くがその痕跡を失くしてしまった。

家族農業は成り立ちにくいし、後継者は育ちにくい環境となる

 大隅半島の古代を調べていくと、縄文時代の遺跡等も結構あり、そうした視点での研究はまだまだ進んでいない。
 
 本題に入ると、ここ2~300年の近代農業、リービッヒは化学的なアプローチを農業分野にも適応することで完璧な農業を築き「すべての貿易と産業の真の基礎」を作ることを主張した。

 農業と名付けられた原始的農業から1万年以上の歴史があり、人糞等を使った循環的農業を経て、近代農業はたかだか2百数十年。それを金科玉条のように守ってきた。

 産業としての農業、人口が爆発的に増えた現代は、それも必要だと思う。
 ただ、今の農家がどんどん後継者がいなく、高齢化が進んでいる原因はどこにあるのだろう…と考えた時に、例えば人糞を使ったりした循環型農業、これらは家族、3ちゃん農業で可能だったが、今は中山間農業も言われてはいるものの、農業が産業化され機械化も含め大規模化がもてはやされ、ICT化でさらに産業化された農業にまっしぐらというところだと思う。

 そこでは家族農業は成り立ちにくいし、後継者は育ちにくい環境となる。

化学的農業で産業の真の基礎を築き完璧な農業?

 別に大規模農業やICT化を否定しているわけではない。
 「化学的農業で産業の真の基礎を築き完璧な農業」という金科玉条的な農法が果たして、真に私たちの幸せをもたらしてくれたのか、食の安心安全が本当に担保されてきたのか。
 これからの科学的農業が私たちに何を与えてくれようとしているのだろう。

 ここ2~300年で返って私たちの食は、これまでとは次元の異なる領域に入り込んできて、いい面と悪い面も含めて、そこを議論していくことが必要なときになったのだろうとも思ったりする。

 「化学的農業で産業の真の基礎を築き完璧な農業」という企業的農業を進める人たち。
 「1万年以上続いた人や自然に優しい農業、食」を求める人たち。
 国の中で、地域の中でそういった棲み分けを考えてみる。

回帰する日本人であってもいいと思う

 まったく個人的な意見だが、「完璧な農業」は、「化学的農業」ではムリ。返って大きな人にとっても自然にとっても弊害が露出してきている。どの農法にも限界はある。
 そこに気付いた人たちは、原点回帰、あるいは新しい視点なのか、化学的農業に一旦、疑義を差し挟み立ち止まってみて、今は小さな組織、また個人的にだが、少しずつ動き始めている。

 そういった歩みも大切にする地球人、回帰する日本人であってもいいと思う。両極端はいけないし、今はとても偏り過ぎている。
 ちょっと違うのかもしれないし賛否両論あるが、次はキューバの農法にも触れてみたい。(米永20240922)

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