2024年06月25日 09時37分

《大隅点描 》

日本の多年生植物の危機~すでに戦後から始まっている

 地球の寒冷化や温暖化の発生は、千年、あるいは万年単位で起きてきた。したがって野生植物は南進、北進を繰り返し生存を維持してきた。

 太古の時代は人口も少なく、開発もなく自然の力が圧倒的で、あるがままに地球環境にゆだねていた。

 しかし西暦1900年を機に、わずか100年で文明開化の名のもとで開発の波が押し寄せ、人口も急激に増加した。

 その結果、今日、思いもしなかった人工的な地球温暖を迎えている。
 戦後79年、少なくとも地球の気温は3度上昇していると思われる。

写真=この時期に南隅でタカクマヒキオコシ群落

 先日、鹿児島県大隅半島の大隅南部の山地で思いもしない光景を目にした。自生する南限のシソ科のタカクマヒキオコシが群落状に開花しているのを発見。

 日付は6月2日である、本種は10月中旬から11月上旬に開花することから、5か月も早く咲いたことになり、また同じ仲間のヒキオコシも林道沿いで咲いており、異様な光景となっている。

 単に狂い咲きした話で、今年春先から初夏にかけての急激な気温上昇によって、これを感知したシソ科植物は子孫を残そうと開花を早めた可能性がある。

 この急激な温度上昇による人工的温暖化は、さらに上昇が予測されている。古来からの日本の気候風土に適した温暖帯、冷温帯の多年生植物、特に冷温帯生植物はゆがんだ気候変動により隔離されたまま逃げ場を失う。

 そして花を咲かせても種子の発生が困難でシイナとなり延命のみとなる。さらには、南系昆虫の侵入を許し食害、病害を発生させ、結果的に冷暖帯植物は生存が不可能となり時を追って立ち枯れ森林土壌は流出する。

 半世紀後の日本の生態系は変わり果てた姿に置き変わることが懸念される。
 四季に育くまれた日本の生態系の被害は、すでに戦後から始まっていることをわすれてはならない。

 大隅の自然、歴史研究
 坂元二三夫

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