2023年04月08日 17時27分

《オーガニック 》

種子法廃止で33道県で条例制定、地方が動起き出している

元農水大臣山田正彦さん講演

 元農水大臣山田正彦さん講演会が、令和5年4月2日、鹿屋市東地区学習センターで開催された。

 主催は、鹿屋・大隅の食と農の未来を考える鹿屋市議会有志の会。山田氏の講演要旨、概要は次の通り。

写真=子や孫たちの未来が危ない!…と訴える山田氏

農家生まれの山田氏 政治家目指す

 山田氏は1942年、長崎県五島列島生まれ。実家は農家で牛1頭、豚2頭、鶏を30羽ぐらい、畑と田んぼを少しやっていた。当時の農家は皆、すべての作物の種取りをしていた。特に、お米の籾は大変大事だった。籾の種は100年生きていると言われるくらい保存がきく食料。
「種」として大事にしながら、いざというときのために全部使い切らずに必ず残しておく。1万年以上の人類の歴史、「種」が私たちの「命」を繋いできた。本来、「種」とはそういうもの。
 私が子どものころ農薬はなかった。ウンカが田んぼで発生した時は、一升瓶の菜種油を田んぼにまいて、竹ぼうきではらって、ウンカを流していた。それが日本の唯一の農薬だった。
 ところが、私が中学校に入って、初めてBHC、DDTなどの農薬がやってきた。袋を開け手でつかんで手回しの噴霧器で田んぼにまく、それをほとんどの農家がやっていた。
 それから化学肥料が入ってきて、いつの間にか、「日本の農業は、化学肥料・農薬・除草剤がなければやっていけない」と考えられるようになった。今や、一般の農家の方は、全国どこでもそう思いこんでいる。

 しかし、人類の2万年の農耕の歴史を考えると、農薬・化学肥料の歴史なんてわずか65年。私たちは、大切なことを、いつの間にか忘れてしまってはいないだろうか。

 私は、大学卒業後に五島列島で牛を飼い始めた。しかしうまくいかず、豚の一貫経営も始めたがやっぱりうまくいかず、素人で肉屋を6店舗、牛丼屋もやったりしたが、さんざん失敗して当時4億円、今だと20億円くらい借金した。
 オイルショックもあり、親戚を連帯保証人に借金していたのでもう大変。幸い、大学時代に弁護士の資格をとっていたので、弁護士として働いて借金を返していった。そして、なんとも悔しくて衆議院議員選挙に出たら3回負け、それでも4回目で当選して5期やって、それでなんとか農林水産大をさせてもらった。私の経歴はそんなところです。

食料自給率の問題

海外の食糧生産支援体制

 議員になって最初ヨーロッパやアメリカの農業を視察した。あちらでは農業と呼ばない。商業や工業と同列ではなく「生命の産業」として「食糧」と呼ぶ。食糧自給率を達成し、持続安定して食糧を提供するのが国の責任、そこに税金を払うのは当然、そのような考え方が根底にある。
 まず、あちらの国の食糧は「支持価格制度」(それぞれの農家の生産原価を毎年調べ、平均値より市場価格が下がったらその差額を政府が補填)で支えられている。

 
 そして、農家は「品目ごとの収入保険」に入る。国が3分の2、生産者が3分の1を補填し、過去5年の農家収入の8割から9割、コロナでは10割の利益分を保険で賄う。
市場は自由競争だが農産物はそうではないという考え方で、生産原価を国、収入を保険で補償すれば農家はやっていける。

写真=熱心に耳を傾ける参加者

「国民を守る」とは「防衛費増」でなく 「国民を飢えさせない」ということ

 ところが、今の日本政府は「国を守る」として40兆、50兆円の防衛費を増やしているが、しかし、国を守るとは、本当は「国民を飢えさせない」ということ。
 日本の自給率は37%と言われるが、実際にはもっと低い。仮に、ロシアとウクライナの戦争で戦術的核兵器が使わるとしたら、核の冬がやってきて世界的流通が2年間止まり、食糧が日本に入ってこなくなる。すると、試算上の餓死者は、世界で1億7000万人、うち日本は7200万人が亡くなる。日本人の餓死者が一番多い。

 このことを東京大学の鈴木宣弘教授が著書「世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか」に書いてベストセラーになった。
「食を自給する」とはそれほど大事なこと、そのために税金を使うのは当たり前のこと。

農業者戸別所得 補償制度を日本でも

 私が大臣になったとき「個別所得補償制度」を米麦大豆など5品目でやった。アメリカやヨーロッパと同じく生産原価を8割補填し、所得を保障した。すると農家の所得は17%上がり、若手の農業従事者が戻ってきた。日本は、それを絶対やるべき。そうでないと安定して国民に食べさせることはできない。

ところが政権が代わり、その補償制度はなくなってしまった。そして、今や米を作れば赤字になる時代になった。農協の組合長あたりは来年あたり米農家の大量離農が出るんじゃないかと心配している。
 TPPでは、「日本は自動車を売って儲けて、そのお金で食料を買えばいい、小さな島国に食糧生産はいらない」と言われて閣議で大喧嘩し、最終的に大臣をやめることになった。その後、私は今日までTPP反対運動を続けてきた。

農薬と健康被害の問題

発達障害児の急増―どうして?

 私たちは、「食糧」というものをもっと根本的なところから考えていかなければならない。気になるのは、やはり農薬・化学肥料だ。
 文科省は先月、高校生までの子どもたちの「発達障害児(多動性症候群など普通の授業が受けられない子ども、特別支援学級や個別指導の子ども)が、日本で16万人いると発表した。なんと、そのうちの10万人が、この10年で増えた。これは本当に大変なこと。鹿屋市でも、今の児童生徒の10%が発達障害児の可能性がある。

米国のがん患者、モンサント 訴え2200億円賠償

 除草剤「ラウンドアップ」。今、これを販売し、空中散布までしているのは日本だけ。
 2018年米国で学校のグラウンドの除草のためにラウンドアップを20~30回散布し、用務員だった方が末期がんになったとモンサントを訴えた。すると全会一致で320億円を支払えという判決が出て世界を震撼させた。まさか誰もモンサントが負けるとは思っていなかった。

 2回目はがん患者の夫婦の訴訟、モンサントに2200億円支払えという判決が出た。その後モンサントは4件負けて、裁判で「ラウンドアップでがんになる」という因果関係が認められた。世界中のトップニュースで報道されたが、日本だけはニュースにならなかった。
 そこで、私は米国に取材に行き、世界を回って「食の安全を守る人々」という映画を作った。

ラウンドアップと遺伝子 組み換え農産物

 実は、私たちが普段使用しているラウンドアップは、主成分はグリホサートでベトナム戦争の枯葉剤と同じ成分。モンサントがあの枯葉剤を作った。植物のアミノ酸生産経路を壊すから植物はみんな枯れる仕組み。
 多くの農産物の除草剤として使われている。米国からの輸入小麦の中にも98%グリホサートが入っている。20年前から分かっているのに発表していない。

 また、遺伝子組み換え技術により、大豆の中に枯葉剤に対して抵抗を持つ菌を組み込んだので、ラウンドアップをまいて雑草は枯れるけど遺伝子組み換えの大豆だけは枯れない「遺伝子組み換え農産物」ができた。
 今、私たちは遺伝子を組み換えられた上に農薬まで撒かれた農産物を口にしている。日本にはジャガイモなど遺伝子組み換え農産物が132品目あり、世界で一番多く認めていて、日本人は遺伝子組み換え作物を世界で一番多く食べている。

世界49か国は禁止 日本は野放し状態

 一方の米国では、今、大変なことになっている。ラウンドアップだけの裁判で12万件、モンサントを買収したバイエルは株価が5割下がり、成長ホルモンなどの動物医薬品部門を売って1兆7千億円で和解進めている。そのような流れで、世界49か国がラウンドアップを禁止した。
 ところが、世界でそんなことが起きているのに、日本だけは今なお「環境にやさしいラウンドアップ、すぐに分解して人間の体にも害がない、土中に撒いても害がない」と謳って販売している。世界では、がんになるのが分かり皆やめているのに、日本だけは野放し状態なのだ。

写真=食の安全について質問

ネオニコチノイド、遺伝子 に作用、発達障害なども

   もう一つネオニコチノイド系の農薬というものがある。日本では、今もお米の空中散布、野菜、家庭用のダニやノミとかほとんどの殺虫剤に使われている。世界中でも一時期使われていた。これは、我々の遺伝子に関わる農薬である。

 TBS報道特集でEU食品安全局がネオニコチノイドの使用をやめたことが報道された。食品安全局の局長が、「私たちは日本の黒田順子博士の論文読み、ネオニコチノイドを使用すると大変なことになることが分かった、未来の子どもたちに大変な影響が出るから、私たちは使用をやめる」とはっきり言った。

 映画「食の安全を守る人々」にも黒田順子博士に出てもらうが、農薬を残留農薬基準の5分の1、わずかなものをラットに飲ませたグループと、飲ませないグループとに分けて実験したところ、 5分の1でもラットはじっと動かなくなったり、急に暴れだして頭をぶつけたり、異常行動をとりはじめた。これでは発達障害になると、EU各国は使用をやめた。米国バイデン大統領も、「未来の米国人の遺伝子に影響ある」と言って規制をはじめている。

遺伝子異常が次世代に伝わり 子どもたちの未来が危ない

 実験では、自分たちの世代、次世代まではそんなに異常な状態にはならないが、孫・ひ孫の世代になると異常なネズミが出てくるという。それは遺伝子スイッチのオンオフが突然切り替わってしまうから。遺伝子本来の機能するところが機能しなくなる。切り替わるタイミングは人によって差があるが、しかし、そうなることは確実。

 もし私の遺伝子のスイッチオンオフが切り替わったら、私の子どもにそのまま、子どもの子どもにそのまま行く。ネズミがどんどん増えていくように遺伝子異常が次世代に伝わっていく。これは、未来の子どもに関わる大変なこと。米国など他の国ではネオニコチノイドを使うのをやめたのに、日本は全くその気がないようだ。

米国のラウンドアップ裁判の勝因

   私は米国でのラウンドアップ裁判で勝った弁護士、ケネディ元大統領の甥のロバート・ケネディ・ジュニアに会いに行って、映画「食の安全を守る人々」でインタビューを行った。
 「どうしてモンサントに勝つことができたのか?」、すると「モンサントは30~40年前から実証実験でがんになるのが分かっていたのを、ずっと機密にしてきた。その内部機密資料を入手し、それを裁判官に見せることができたから勝てた」と。

体内からグリホサート・ネオニコチ ノイドが検出される

   私もラウンドアップのグリホサートが体の中にあるのではないかと調べた。国会議員23人からも髪の毛のサンプルを集めて、フランスの「クズサイエンス」に送った。調べたところ、その7割から出た。私も出た。皆さんの中での7割は出てくるでしょう。
 ネオニコチノイドの検査は「デトックスプロジェクトジャパン」で誰でも検査できる。結果、みんなから出た。おそらくここにいる皆さんからも出るでしょう。いつ発症してもおかしくないし、今、日本は本当に異常な状態になっている。だから、我々は、グリホサート・ネオニコチノイドをなんとしてもやめさせないといけない。

ラウンドアップを禁止する世界 残留基準を大幅緩和、散布推奨する日本

   ところが、世界では禁止しているのに、日本では国産大豆の収穫前にラウンドアップを撒かせている。農水省が薦め、日産化学もテレビでコマーシャルで「収穫前に撒けば一斉に枯れるからコンバインに負担がかからない」、今でも宣伝している。国産大豆・豆乳投入だから大丈夫というわけではない。
 また、世界では禁止しているのに、日本だけはグリホサートの残留農薬基準を一気に上げた。小麦は中国の150倍。日本は基準を逆に緩めている。とても怖いことが起きている。

私たちにできること1 ―農薬散布の中止

北海道ホクレンが大豆 への散布をやめた

 私たちは、これをやめさせるために一生懸命回った。北海道のホクレンは大豆の一番の生産地。何度もみんなで頼んで、去年、大豆のラウンドアップの散布をやめてくれた。福岡はまだ散布している。鹿児島はどうだろうか?今、北海道に倣って、全国でラウンドアップの散布をやめようとしているところが増えてきている。
 ぜひ、鹿児島でも収穫前の作物へのラウンドアップ散布をやめさせていただきたい。

写真=オーガニック給食や種子法、種苗法のパンフ

愛知県今治市、埼玉県川越市 学校のラウンドアップ散布やめた

 保護者が「学校でのラウンドアップの散布やめてください、身体に悪いんです」と愛媛県今治の市長さんのところに行って説明したところ、2週間のうちに、教育委員会の教育長から、各市の市町村と各学校宛に「校内での散布辞めるように」と通知がいった。
 埼玉県川越市の公園で散歩しているときに子どもがパタッと倒れた。病気かなと思ったら、隣にいる子どもも倒れた。近づいてみると、においがしラウンドアップを散布した直後だった。小さな子どもほど脳幹門をスルーして異常が出やすい。
 そこでお母さんたちが動き出して、市長に3分間をもらい、1時間40分の映画「食の安全を守る人々」を1分に縮めて見てもらい、その1週間後に川越市は年2回散布していた業者との契約を破棄した。全国で散布をやめる動きが出てきている。  ぜひ、鹿児島県でも、学校周辺の除草のためのラウンドアップ散布をやめさせていただきたい。

私たちにできること2 ―有機農業とオーガニック給食の推進

世界は有機栽培へ その流れが変わってきた

 今、世界は有機栽培の流れに変わってきている。やっと農水省も「みどりの食料システム戦略」を作り「2050年まで、30年先に日本の農地の25%を有機農業にする」と言った。
 ただし、有機農業には賛成だが、これには少しまやかしがあるのでみなさん気をつけてほしい。農水省はゲノム編集種子を有機認証する手続きをとっており、新しい種子、RNA農薬(遺伝子操作した農薬)を今度のみどりの食料システムで使うと書いているので、僕はその部分は反対している。

 EUはあと7年で農地の25%が有機農業になる。イタリア、メキシコ、ドイツなどすごい勢いで変わってきている。米国も年7・8%の割合でケミカル栽培から有機栽培に変わってきている。韓国も日本の10倍有機栽培が盛ん。2年半前に韓国の有機栽培農家を訪ねてまわった。聞くと、みんな「学校」に出荷していた。学校が高く買ってくれるから。世界中のスーパーに行ってみると、半分はオーガニックコーナーになっている。

世界はオーガニック給食へ 日本での動き

 韓国は、幼稚園保育園から高校まで、給食はすべて無償・有機でやっている。各学校に調理室がある自校方式で、調理する人と子どもが仲良し、とても広い食堂があってみんないきいきとしている。驚いて韓国の農水省に行って話を聞いてきた。すると、憲法上「教育の義務と無償化」が謳われていて、学校給食は学校教育そのもの、「食育」である。
 だから、「教育の無償化」として給食を無償にしているという話だった。本当は日本も「教育の義務と無償化」は同じだが、段違いだ。
 海外の学校には広い食堂と給食室があり、先生を交えて1時間~1時間半かけてゆっくり食べ、かたや日本では生徒に「15分で食べろ」と言っているのが現状だ。
 鹿屋の学校給食は自校方式ですか?センター方式ですか?食材はどうですか?センター方式だと、生野菜を使わず、冷凍野菜を使うから包丁もまな板も使わない。ミキサーで混ぜて子どもたちに与えて、まるで家畜のエサだね。これは教育じゃない。

 僕は、映画でこれを無償有機でやっているところを調べて回った。昨年10月26日、全国の市町村やJAに声掛け全国オーガニック給食フォーラムを東京の中野ZEROホールで開催し、1200人参加、オンライン含めると4000人参加した。沖縄から6人、北海道から7人きた。
  韓国から帰ってきた2年半前、オーガニック給食は36市町村だったが、東京23区では、葛飾区や中野区で無償有機で学校給食やると決めた。世田谷区、北区、品川区など8つの区で4月から無償有機給食をスタート。5つの区で検討中、13区で無償有機給食が始まろうというすごい勢いとなっている。文科省も有機食材で…というところにきている。
 このフォーラムでJA常陸組合長が1時間ほど話してくれた。JA常陸は、学校給食への有機食材提供に挑戦中。「これからのJAが生き残る道は有機農業しかない」とはっきりおっしゃっていた。

 ぜひ鹿児島でもオーガニック給食を進めてほしい。「広がるオーガニック給食」、この資料を鹿屋でも市長さんに持っていってくれないかな。
 鹿屋市も子どもたちのために無償・有機食材に。鹿屋市でもできるんじゃないかな。

種苗法改定の問題

 これから「種」の話をしていきましょう。

 〇種子法とは、日本人の主食となる穀物種子を国や自治体が安定供給させる責任義務を追う法律だったが、民間企業が種子事業に参入しやすくするため2018年に廃止された。。
 〇種苗法とは、市場流通する植物の新品種権利保護(品種登録制度)と種苗表示等の規制を定めた法律で、2021年に登録品種の自家増殖が承諾性になる改定があった。

そもそも種苗法改定は 必要だったのか?

 まずは、種苗法改定について。登録品種作物の種の自家採取ができなくなった。違反したら10年以下の懲役、1000万円以下の罰金、共謀罪となる。そういう法律がいよいよ施行された。
 当初、政府はシャインマスカットやあまおうなどの優良な知的財産が海外に流出するのを防ぐために農家の自家採取を禁止しないといけないと言って種苗法を改定したのだが、国会で「シャインマスカット、あまおうが流出したことありますか?」と聞いてもらったら、農水省は「そのような事実はつかんでいない」と答えた。

 国会で嘘を言えば偽証罪になるから本当のこと言った。「優良な育種知見が海外に流出していないのに、国はどうして農家の種取りを禁止するのか?」と聞いてもらったら、国は答えられなかった。そもそも種苗法そのものは国内法だから海外に出て行ったものを止めることはできない、もともと論理的にも矛盾していた改定だった。

 しかも、登録品種の自家栽培は10%未満、わずかな人だけだから大丈夫と農水省は言っていたが、農水省の調査資料では52.4%の人農家が自家採取しているじゃないか。農水省の様々な説明がうそだった。残念ながら報道はされなかった。何度も審議は止まった。我々は様々な形で反対した。それでもこの法案は自民党多数で通ってしまった。

かつてのモンサント法と 種苗法改定の類似性

 かつて4-50年くらい前、米国の圧力で、自家採取禁止法案(モンサント法)が世界中に作られた。そしてモンサントやシンジェンタといった多国籍企業の遺伝子組み換え種子を農家に作らせたところ、インドでは20万人自殺者が出て、コロンビアでは農民暴動がおこり、世界中で廃止の動きになった流れがある。
 1983年に国連食糧農業機関(FAO)は、食糧農業植物遺伝資源条約19条でも「種取りは農民の権利」だとし、日本も批准している。。

自家採取禁止は日本 とイスラエルだけ

 国会で、「自家採取したら10年間の懲役とかの罰則まで定めて厳しく取り締まる国は他にあるのか?」と聞いてもらったら、農水省は「日本とイスラエルだけ」という回答だった。

種子法の廃止とは

 次は、種子法廃止について。日本人の主食、米、麦、大豆などの主要穀物について、在来種から改良して各土地に合った優良な品種を、各都道府県の法律上の義務として、安く安定的に農家に提供することとしたのが種子法。。
 これが廃止になった。そして政府は、「各都道府県は、その代わりに三井化学のF1品種『みつひかり』を販売して作らせなさい。それ以外の種子を農家に与えてはいけない」と言った。そして、その値段は通常種子より10倍近く高い。大変なことだった。。
 今は、ほかの野菜の種もほとんどF1、1代限りの品種になっている。その時政府は、これからはコメ麦大豆は、すべてF1品種にすると言って回っていた。

私たちにできること3 「種子条例」・「種苗条例」 地域独自の法律を作る

地域条例制定で対抗の動き

 そこで私も必死で全国を回り、種子法廃止に対抗する「種子条例」を作って回った。新潟県、山口県、長崎県、鹿児島県、この3月までに合わせて33の都道府県で「種子条例」ができた。条例は法律です。
今治市では「市の承諾なくして、遺伝組み換え農産物作ったら、半年以下の懲役、50万円以下の罰金に処す」という「種子条例」を作った。長野県では、種苗法改定に対抗して、長野県のりんごなど「県の登録品種については、今までの種苗法通りの登録手続き、登録料はいらない」という「種苗条例」を作った。

 鹿児島県は「種子条例」はできたが「種苗条例」はまだ。「県の登録品種に限っては、これまで通り自家採取可能」と決めてくれたが、ただ、これは激変緩和措置であり条例ではなかった。。
 県の決定というだけでは法的効力はない、条例だったら法律になる。これらの法律は、それぞれの地方自治体で作ることができる。議員が頑張れば作ることができる。鹿児島県、鹿屋市でもできるはず。

「地方分権一括法」により 国と地方自治体は法律上同格

 これから大事な話をします。日本は、明治以来中央集権国家であり、国が指揮命令監督してきた。市は県にお伺い、県は国にお伺い、これが今までの日本。ところがこれは憲法の地方分権に反している。そこで、私たちが政権を取った時に「地方分権一括法」を通した。これまでの国が都道府県、指揮命令監督を一切禁止、通達禁止、過去の通達のすべての効力がなくなった。だから、地方自治体は、国の法令に反しない限り、どんな法律でも作ることができる。。
 国会議員だけが法律を作るのではない。自治体でも議員が条例を作ることができる。もし議員がさぼって作らなかったら、有権者の50分の1で皆さんが作ることができる。鹿屋市がひと月で約1600人集めて、条例案を市民が提案して、住民投票にかけることができる。私たちが権利者なんです。。
 泉佐野市がふるさと納税でやられたが、最高裁の判決で泉佐野市が勝って国が負けた。その時の判決理由。「国と市とは法律上同格である、国の泉佐野市への通知は単なる技術的助言に過ぎない」という判決。

 我々は何でもできる、法律に反しているかの判断は第一義的にまずは自治体が決める。もし地方議会が法令に反した条例を作ったとしたら、国が裁判を起こして10年戦わないといけない。我々が権利者なんだ、そうして種子条例ができた。。
 読売新聞は、「国が種子法を廃止したのに対して、地方が反発して種子条例を作った」と書いた。国に歯向かったと。これまではみんな国の言うとおりだった。

種苗法改定がいよいよ動き出した 映画「タネは誰のもの」で今何が

 話は変わり、種苗法改定がいよいよ始まった。「紅はるか」という品種は、国の登録品種。今年は自由にこれまで通り農研機構から安く買い、JAも農家も作れたが、今年4月からいよいよ出来なくなった。
JA茨城の組合長から報告があった。これまでJAとして種芋を農研から機構買ってきたが、例年通りに注文したら「これからは指定した民間の種苗会社から買ってください」と来た。いよいよ始まった。。
   紅はるか、イチゴも、いよいよ自家採取禁止が始まった。これまでと違って値段も高くなった。種芋、定植苗を高く買うことになりそうだ。このことをみんなに知ってもらいたい。 映画「タネは誰のもの」のDVDを持ってきた。ぜひみんなに観てほしい。そして、鹿児島県には「種子条例」はあるから、何とかして種苗条例も作ってほしい。そのお願いをするために、私は今日ここに来ました。

 農業競争力強化支援法8条4項では、各地方、あまおうなど県の品種を民間から提供を受けたら提供しなさいという。

議会がサボっていたら 住民で条例を作ればいい

 それではどういう種苗条例作ったらいいか。国の登録品種1980種類、各都道府県420種類が農業競争力強化支援法8条4項で民間に知見が提供されましたと、農水省が正式に発表。
 民間はどこなのか、モンサントなのか明らかにしてほしいと情報公開法で尋ねたが黒塗りだった。
 各県で情報公開条例ができているが、日本の種を守る会で福岡県がやってくれ、あまおうが民間の名前は黒塗りだったが、株式会社に知見提供されたということが分かった。べにはるかも、知見提供されているのが十分に考えられる。

 沖縄でこういう条例を作ってもらえた。もし民間から提供求められたら、それに対して生産者、消費者、学識経験者入れて、審議会を設ける、経済にどういう影響与えるかアセス調査を2年がかりでやる。

 もう一つ、沖縄に頼んだ、県民財産だから、県民代表県議会議員の決議がなければ提供できない…ということ。だが、これはできなかった。

 県の登録品種、県の農業振興のために作った、農家に負担をかけずにこれまでの種苗法通り手続きはいらない。県が権利者であり、そういう条例を県で作ることができる。
 県知事が変わろうと、国が何が言ってこようと県の登録品種であり守れる。何とか種を守ることが大事。頑張りましょう。

 会場から「4月から食品の表示が変わるが、どうやって安全なものを見分ければいいか」「鳥獣被害について何か対策は」などの質問があった。

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