《伝統 》
今年の豊作を祈願する春祭り~安楽山宮神社で春祭
志布志市志布志町安楽地区の「安楽山宮神社」で令和7年2月8日、「安良(やすら)神社」で2月9日、県無形民俗文化財に指定された「安楽山宮神社春祭り」が引き続き開催され、今年の豊作を祈念した。


8日の安楽山宮神社の祭りでは、祭りに先立って地元の子どもたちに「正月踊り」が、神社鳥居前の広場で公開された。
子どもたちは広場いっぱいに広がり、座って鑑賞した。黒頭巾姿の踊り子が三味線の音楽に合わせて、手首をキュッと曲げて踊った。子どもたちは熱心に鑑賞し拍手。
公開の踊りが終わると、安楽山宮神社で豊作祈願の神事があり、拝殿横の模擬田に竹串に色紙を付けた稲苗を参列者がそれぞれ植え、豊作を願った。

神事が終わる頃、田の神夫婦が御神酒の入った酒樽を提げて拝殿に上がり込む。参列者の代表と無言でメシゲを動かすなどして顔を隠したまま問答し、焼酎を約1升酌み交わした。田の神は、今年の作を占った。
神事が終わると境内広場で「正月踊り」の奉納があった。踊りは祭りが始まる前に子どもたちに披露した踊りと同じ。黒頭巾で顔を覆って目だけ出し、笠をかぶる。白地のズボンに黒の着物姿で円陣を組み、手首をキュと曲げて踊る。

境内に出端で入場し、一つとのなどの演目を踊った。踊りに田の神夫妻も参加。
田の神は大きなメシガイを持ち、嫁女は杓子を持ち踊りの輪に参加。焼酎を大量に飲んでおり、フラフラしながら竹筒に入った男性のシンボルをふり回しながら愛嬌を振り回した。
孟宗竹の竹筒に男性のシンボルは入っており、踊りの最中に竹筒はメシガイで叩き、地面に叩き付けるなどして割る。

祭りが終わると、神輿を先頭に旅所までの神幸して、帰った。
翌日の14日は安良(やすら)神社まで神幸する。ここでも田の神夫妻が登場し、安楽山宮神社と同じように問答した。神事が終了すると境内を田に見立て、田打ち、牛で田を耕す、種蒔き、カギ引きなどの打ち植祭があった。ここでも最後に、正月踊りが奉納された。
春に豊作を祈念する「打ち植祭」は大隅半島に多く残っており、2日間かけて、2社で引き続き行われるのは珍しい。