2024年04月24日 20時52分

《雑草 》

防衛白書や防衛力整備計画等から見る基地の整備

 前回書いた安保三文書の「防衛力整備計画」の内容に入る前に、令和5年の防衛白書を見てみると、そこでは、2013年の前国家安全保障戦略策定時以前と、2022年の現国家安全保障戦略策定時との変化が記されている。

写真=無人アセット(装備)活動のイメージ(防衛相資料から)

 国の安全保障を確保する「最後の砦」として中核を担う自衛隊。
 その防衛力については、わが国は戦後一貫して節度ある効率的な整備を行うものとしてきたが、今後は、いついかなるときも力による一方的な現状変更やその試みは決して許さないとの意思を明確にしていく必要がある…としており、大きな変化を示している。

相手の能力と新しい戦い方に着目した防衛力の抜本的強化

 国家防衛戦略では、国民の命と平和な暮らしを守り抜くためには、その厳しい現実に正面から向き合い、相手の能力と新しい戦い方に着目した防衛力の抜本的強化を行う必要がある…としている。

 そして「高い軍事力を持つ国が、あるとき侵略という意思を持ったことにも注目すべき」、「力による一方的な現状変更は困難であると認識させる抑止力が必要であり、相手の能力に着目した防衛力を構築する必要がある」として、弾道・巡航ミサイル攻撃、宇宙・サイバー・電磁波の領域や無人機などによる非対称的な攻撃、情報戦を含むハイブリッド戦にも対応する…と。

 そこで、3つの防衛目標が掲げられている。
①力による一方的な現状変更を許容しない安全保障環境を創出。

②力による一方的な現状変更やその試みを、同盟国・同志国などと協力・連携して抑止・対処し、早期に事態を収拾。

③万が一、わが国への侵攻が生起した場合、わが国が主たる責任をもって対処し、同盟国などの支援を受けつつ、これを阻止・排除。

そのために、令和5(2023)年度防衛関係費は、防衛力を5年以内に抜本的に強化するために必要な取組を積み上げて、新たな「整備計画」の度に相応しい内容及び予算規模を確保という防衛力抜本的強化「元年」予算となっている。

 そうした中での海自鹿屋基地の整備も行われていく。

目の前にある基地が、今後どんな形で運用されるのか

 目の前にある基地が、今後どういった形で運用され、整備され、あるいは変容していくのか、断片的な情報しかなく、毎日の生活に追われる中で見過ごしてしまいがちだが、昨今の国際情勢を考え、国は「万が一、わが国への侵攻が生起した場合」を想定しこの国の防衛を抜本的に強化していくという。

 鹿屋基地もその渦中にあり、空中給油機KC130の訓練、それに伴うオスプレイの飛来、米軍無人機MQ9の一時展開、そして海自無操縦者航空機の試験的運用が始まる。

 今後、防衛力抜本的強化「元年」予算に基づき、鹿屋基地にも多額の予算が付けられて整備されていく。

 具体的な内容は現時点ではわかりにくいが、令和4年12月の「防衛力整備計画」の内容を見てみると、流れの一端はつかめそうだ。

 自衛隊の能力等に関する主要事業として、2027年度までに、我が国への侵攻に対し、我が国が主たる責任をもって対処し、同盟国等の支援を受けつつ、これを阻止・排除できる防衛力を構築するため、防衛力の抜本的強化に当たって重視する主要事業を1から7までのとおり実施することとする。

1スタンド・オフ防衛能力
2統合防空ミサイル防衛能力
3無人アセット防衛能力
4領域横断作戦能力
 ⑴宇宙領域における能力
 ⑵サイバー領域における能力
 ⑶電磁波領域における能力
 ⑷陸・海・空の領域における能力
5指揮統制・情報関連機能
 ⑴指揮統制機能の強化
 ⑵情報収集・分析等機能の強化
 ⑶認知領域を含む情報戦等への対処
6機動展開能力・国民保護
7持続性・強靱性
 ⑴弾薬等の整備
 ⑵燃料等の確保
 ⑶防衛装備品の可動数向上
 ⑷施設整備
 その内容が詳しく説明してある。

 その中で、無人アセット(装備品)防衛能力の項目では次の説明がある。
 人的損耗を局限しつつ任務を遂行するため、既存の装備体系・人員配置を見直しつつ、各種無人アセットを早期に整備する。その整備に当たっては、安全性の確保と効果的な任務遂行の両立を図るものとする。

 隙のない情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング(ISRT)を実施するため、洋上監視に資する滞空型無人機(UAV)及び艦載型の無人アセットや相手の脅威圏内において目標情報を継続的に収集し得る偵察用無人機(UAV)のほか、用途に応じた様々な情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング(ISRT)用無人アセットを整備する。

 また、広域に分散展開した部隊、離隔した基地、艦艇等への迅速な補給品の輸送を実施するため、輸送用無人機(UAV)の導入について検討の上、必要な措置を講じる。

 我が国への侵攻を阻止・排除するため、空中から人員・車両・艦艇等を捜索・識別し、迅速に目標に対処することが可能となるよう、各種攻撃機能を効果的に保持した多用途/攻撃用無人機(UAV)及び小型攻撃用無人機(UAV)を整備する。

 艦艇と連携し、効果的に各種作戦運用が可能な無人水上航走体(USV)を開発・整備する。また、水中優勢を獲得するための各種無人水中航走体(UUV)を整備する。

 このほか、無人車両(UGV)と無人機(UAV)を効果的に組み合わせることにより、駐屯地・基地等や重要施設の警備及び防護体制の効率化を図る。
 加えて、有人機と無人機(UAV)の連携を強化するとともに、複数の無人アセットを同時に運用する能力の強化を図る。

 鹿屋基地で海自無人機の試験運用がどんな形で行われ、その後の本格的な運用がどうなっていくのか。駐屯地・基地等や重要施設の警備及び防護体制の効率化を図ることが着々と進められようとしている。それも海上だけでなく、海中や陸上ともからめ無人機の重要性は高まっていくようだ。

 鹿屋基地の将来の姿がどうなっていくのか、「防衛力整備計画」の内容にもう少し触れていきたい。(米永20240424)

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