《宇宙 》
日本の宇宙科学研究に多大な貢献~KSドーム解体へ
内之浦宇宙空間観測所で一つの歴史刻む
肝付町の内之浦宇宙空間観測所で、日本最初の人工衛星である「おおすみ」の打ち上げなど行ってきたKSドームが、令和7年1月14日から解体作業が行われる予定で、解体の前に、ご苦労様の意味を込め「ありがとうKSドーム」という垂れ幕が張られ、長年の活躍に感謝の意を伝えている。
写真=ドームにある銘板
同施設は、ロケット用天蓋開閉式発射保護装置(KS ROCKET LAUNCHER DOME)=通称KSドームで、高さは約16・5mある。
観測所が開設された昭和37年当時からペンシルロケット、観測ロケットがこの場所から打ち上げられてきたが、雨風など天候の影響を受けないためにこのドームが建設され、昭和56年8月24日にS-310-10号機が初打ち上げされ、これまで数多くのロケットが打ち上げられてきた。
このドームのあるKSセンターは、標高276mにあり、面積7000平方メートル。
SS-520、S-520及びS-310型観測ロケットの発射台で、観測ロケットは同敷地内の組立室で組み立て、ランチャーに載せられドームへ移動し、ドーム内でロケットを発射方向へ向けて発射姿勢をとる。
発射時には、ロケット発射方向にあるドームの天蓋が開かれ、前後と両側の扉を排煙のために開き、発射されていた。
写真=高さ約16・5m
このKSドームからは、観測ロケットが打ち上げられてきたが、平成26年には隣に新ランチャーが完成。
また、KSドームから海側のMロケット発射台地に、衛星打上げ用のMロケット発射装置、ロケット組立室、衛星整備センター、発射管制室が完成。
その後もKSドームからは、平成28年1月15日のS-310-44号機が打ち上げられたが、これを最後に打ち上げが終了した。
ドームの隣の新ランチャーから観測ロケットは今後も打ち上げられる予定だが、KSドームは老朽化もあり解体となった。
日本のロケット開発、発射の大きな歴史を担ってきたドームが一つの大きな役割を終え、また新たな歴史が創られていくことになる。
ドームを含め、これまでKSセンターから打ち上げられたロケットは別図の通り。
写真=内之浦宇宙空間観測所HPから
写真=垂れ幕にKSドームからの打ち上げ時の写真も
なお、観測ロケットは衛星打上げ用のロケットとは違い、宇宙空間を飛行しながら落下するまでの間に、各種観測や実験を行う小型飛翔体。
同ロケットを利用して、超高層大気や地球周辺の科学、さらに天文学などの幅広い科学観測を行っている。
新しい飛翔体システムの開発や微小重力を利用した材料科学や各種光学実験の分野でも、観測ロケットが使用され、これら実験では、計画立案から実験実施まで迅速な対応が可能であり、短時間で実験成果を得ることができる。
現在、JAXAが使用している観測ロケットはS-310型、S-520型、SS-520型の3種類。
同観測所では、昭和37年の設立以来、大小400機を超えるロケットと、日本初の「おおすみ」を含む30機あまりの人工衛星、探査機を打ち上げ、宇宙科学研究に多大な貢献を果たしている。
写真=新ランチャーを左に(内之浦宇宙空間観測所HPから)