2024年10月16日 12時58分

《雑草 》

おのずと心持ちが穏やかで平和な日常と、人新世と

 「平和」って何だろうということを、何か小難しいことで書いている。もっと深みにはまって遠回りしてしまいそうだが、読んでもらいたい。

 「人新世の資本論」という斎藤幸平氏の本が、2020年に出版された。思うところがあって何冊か求め、知っている人に配ったことがあった。

 また、資本主義の限界を論じる本も結構出版され、それは特にグローバル経済、グローバル資本主義社会では、求める地球上の富としてのパイが限界にきて行き場を失ってきているのに、それでも飽くなき増殖を求める人や社会は、今まで人が生きていく上で同じように当たり前のように接してきた水や空気、土や種、公共のものまで資本主義の対象になっていき、普通に生活できない人も増え、持てる人と持たざる人との間にさらに格差、溝ができ分断されていく社会。

写真=環境省HPから

 そうしたことで、平穏な社会がかき乱され、平和が揺らいでいく。今そういう社会なのか。

 人新世の資本論では、人が生きていく上で当初、物に対する使用価値を大事にしてきた社会が、物も投機対象になり、金銭の価値が主体となっていけばいくほどその力が大きくなり、今度は価値が当たり前のように主体となって、その増幅が自動化されるようになる。
 そうなっていくと、人も自然も資本に従属して利用される存在に格下げされてしまう。この「モノに使われ、振り回される社会」に警鐘を鳴らしている。

 しかも、資本主義は価値の増殖を無限に求める社会を作ってしまい、持てる側はさらに増殖を求め、人だけでなく自然もその影響を大きく受ける。

 そして資本主義の進展とともに、目の前にある自然も破壊されていき、さらにグローバル資本主義がどんどん加速されていくと、環境危機も加速、これら危機と無関係でいられる場所が、この地球上にもはや残っていないところに来ているのではないか、それが「人新世」だという。

 世界中で起こっている紛争や飢饉、山火事、激甚化していく自然災害、断定はできないかもしれないが、そうしたこともこれら環境危機とつながっている。

 「人新世の資本主義」が、地方に住む私たちにとっても無関係なのだろうか。
 日本でも、経済の物差しが優先し合理性を追求してきた結果、大きな経済の外にある地方にそのしわ寄せが及び、まずは学校が無くなり、郵便局等もなくなってきて過疎の町が加速化され、人の住めない消滅集落となってきた。

田舎へ移住してくる人たち

 話がすごく遠回りになった。
 この本を読んでいたときは、前回まで書いてきた宇宙観のようなものとの接点はほとんど意識していなかったが、今になって通ずるものがあるのではと感じている。

 もちろん人が生きていく上で、経済を考えないと生活はできない。ただ、そこまで多くはないが、最近、そうした過疎の町や村に、移住してくる若者、若い世代のファミリーも増えてきている。
 移住に関するテレビ番組も多くあって、そうした傾向にいち早く着目し、特に子育て等に手厚く助成をする自治体に人気が集中、移住者で活気あふれる地域も増えてきているという。

 そこで何が起こっているかというと、経済中心というよりも、自然が豊かだったり、食べ物が美味しかったり、子育てがしやすかったりする地域を選択する若い世代が増えてきているということだと思う。

 間接的に聞いた話だが、移住者同士のネットワークも結構強く、例えばここでの子育て支援はどうだとか、仕事の後押しとか、地域の移住者に対する行政の対応はこうだとか、それら情報が飛び交い、それで選択する人たちも多いという。

これからの世代の選択は…

 また先日も、就職に関わっての取材で、今の若い世代は、給料の多寡よりも休みが多いとか、自分の趣味を活かせる生活ができる場所や、そうしたことに配慮している会社を選択する人も増えてきているという。

 そこでは、人新世という言葉を知らなくても、経済より環境という選択をしている若い世代ということなのか。

 他の先進国の中でも同じように、都会から田舎へという傾向もあるかもしれないが、この「人新世」を大きく受けている社会よりも、その反面教師的に日本人としての世界観や宇宙観のようなものがその人の中、その底辺にDNAとして残っていて、そんな選択をする人が増えてきているのではないかと勝手に思っている。

 なので、こじつけだと言われそうな気もするが、今、過疎のムラ、消滅集落をどうしていくかという本を何冊か目を通してみたが、それを解決していく何かテクニックのようなものだけが並べられていて、しかも人新世という括りの中でのことだから、何かピンとこない。

大隅半島はどんな半島?

 それより、人間のみならず、動物、植物、更には山や川の自然までも仏性を内包している世界観、仏教伝来前から日本に根付いていた自然信仰(アニミズム)的な発想を大切にするという人たちや地域。

 今、この大隅半島に移住をしてきた人たちの中には、自給的な生活を家族で楽しんでいる人もいる。そういう人たちと接していると、自然そのもの、大げさがだが地球を愛している人たちなのかなと思う。

 そして言葉にはしないけれど「空」や「無」のようなものを肌で感じて安寧に生きている人たちなのかなとも考えるし、おのずと心持ちが穏やかで平和な日常に繋がっていく…と思う。
 日本の中でもそういった地域が、今後増えていきそうな気もしている。大隅半島がそんな半島であってほしい…とも思う、青臭い考え方だと言われるだろうが…。(米永20241016)

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