《雑草 》
何か違った鹿児島や大隅半島の未来が見えてくるのだろう
内之浦宇宙空間観測所のKSドームが解体されることは、本記事で書いた。
ロケット打ち上げは、私たちにとっては未知の世界である宇宙空間の何たるかを知るために、内之浦から昭和37年以来、大小400機を超えるロケットが打ち上げられてきた。
また、日本初の「おおすみ」を含む30機あまりの人工衛星、探査機も打ち上げられてきた。
今、北海道や和歌山で民間の人工衛星が打ち上げられ、また打ち上げられようとしていて、アメリカや中国など世界各地でもロケットが打ち上げられていて、どちらかというと小型の観測ロケットは地味ではある。
KSドームが解体されると聞いて、プレスリリースがあったわけでもなく取材をしようと思ったのは、地味かもしれないが、昭和37年から60数年間、日本の先駆けとして宇宙科学の世界をリードしてきた、その歴史の一コマを支えてきたドームの最後の姿を見たかったからだ。
写真=日本の宇宙科学の歴史の一コマを支えてきたドーム
今後さらにいろんな形で宇宙が大きくクローズアップされてくると思う。
これまで国や研究機関が支えてきた宇宙科学、それをベースにしてロケット打ち上げに民間が参入、一気に産業としての宇宙が花開き、「2040年に100兆円規模~成長の勢い増す宇宙産業、日本は世界に存在感を示せるか」というレポートもあり、その裾野はとても広いと思う。
大隅半島に住む私たちのこの年代は、ロケット打ち上げが、目の前に当たり前のようにあり、その思いはそれぞれだとは思うが、昨年11月の観測ロケットS-520-34号機打ち上げのあと、記者会見まで数時間あったので、内之浦で昼食をと思いマチでいろいろ話を聞いてみたが、「今回のはこめ(小さい)でやねえ」という声も聞いて、種子島や他の民間ロケット打ち上げからのすと派手さがないのか。
ただ、声を大にして言いたいのは、内之浦での400機を超え打ち上げられたロケットの膨大なデータの上に今の衛星打ち上げがあり、月に、火星にということが言えるのだと。
内之浦なくしては、日本の宇宙科学は語れない
飛行体を飛ばすための空力、重心や揚力からスタートし、ロケット燃料や超高層大気観測から天文学などなど私たちの知りえない未知の世界への探求、内之浦なくしては、日本の宇宙科学は語れないのだと思う。
糸川博士がロケット発射場を内之浦に決めた時のエピソードや、当時の町民との温かい交流など物語は伝えられているが、大隅半島民、県民がこの60数年間の歴史を大事にし、もっと知るべきだと感じている。
KSドーム解体のことを取材し、改めてその歴史の深さと偉大さを思う。そして鹿児島県には種子島と2つのロケット基地がある宇宙の県でもある。
内之浦と種子島のその地だけでなく、鹿児島県自体がもっと宇宙科学、宇宙開発、そして宇宙産業に目を向け、力を入れていくべきだと思う。
宇宙に関して、特に民間参入に関しては北海道や和歌山に大きく水を開けられている。なぜ、日本に2つしか無いロケット基地が鹿児島県に存在しているのに、2040年に100兆円規模~成長の勢い増す宇宙産業…という波に乗れていないのか残念でならない。
そしてロケット打ち上げ後の数時間の内之浦のマチでの声、大隅の中心たる鹿屋が無関心だしね…、大隅半島は鹿屋が動いてくれないとね…とも。
この大隅半島、半導体の大きな工場がくるわけでもないし、畜産業は盛んかもしれないが、観光もイマイチ、宇宙は内之浦が、肝付がとかでなく、大隅半島、そして県が関わっていくべき問題、課題であり、大きなチャンスでもある…、特に大隅半島にとって…、それだけの価値があるはず…と。
宇宙関連情報のアンテナも張り巡らせて…
今、内之浦には宇宙関連の企業の訪問があったり、内之浦宇宙空間観測所入口の宇宙科学資料館が老朽化しバリアフリーでもないので、その建て替えの話もあるという。
そうした流れで県外から来られる方々は、コスモピア内之浦が閉館していることもあり、多くが鹿屋市に宿泊していると聞く。
その恩恵も受けている。また、資料館はミュージアムとして、宇宙関連の企業が何らかの形でかかわってもらえたら…という構想もあるやに聞く。
そうなると、そこには企業誘致にも繋がってくるのだろう。内之浦や肝付もだが、自動車道インター付近という立地は、県外の企業からすると想定内、というより常道なのか。
鹿屋市は細山田に工業団地を整備するという。もちろん農業関係の加工等もだが、少し視点を広げ、県とともに宇宙関連情報のアンテナも張り巡らせると、何か違った鹿児島県や大隅半島の未来とその風景が見えてくるのだろうと思う。
(米永20250111)