《農林水産 》
次世代型畜産で地方創生等目指す南九州畜産獣医学拠点開設
財部高校跡地を活用し曽於市と鹿児島大学が連携
2016年に閉校した曽於市財部高校跡地を活用し、鹿児島大学と連携し令和6年4月に運営開始される獣医師などを養成する教育・研究施設「南九州畜産獣医学拠点」(通称SKLV・スクラブ)の内覧会が3月9日開かれ、次世代型畜産による地方創生など目指す事業がスタート、関係者らが完成を祝った。
写真=開設祝いテープカット
畜産が盛んな曽於市が、鹿児島大学と連携し、高校跡地の4万2000平方メートルの敷地に約28億円をかけて整備。
アニマルウェルフェア配慮型産業動物モデル飼育エリアでは、グラウンド跡に、「次世代閉鎖型牛舎(和牛一貫飼育)」、「閉鎖型鶏舎」を新設。
3棟の牛舎では、壁面に換気用の大型ファンが取り付けられ、感染病対策のほか、温度・湿度などを気象センサーで管理気流や細霧を自動制御。バイオセキュリティや臭気対策動物福祉に配慮し牛のストレスを軽減。
JA県経済連が350頭の和牛を飼育し一貫飼育出産から出荷までのすべての工程での実習、次世代型畜産によるブランド牛にし、5年以内の海外への輸出を目指している。
写真=五位塚市長が式辞
写真=佐野学長があいさつ
写真=森山衆議院議員らが祝辞
鶏舎では、鹿児島大学が5000羽を飼育、研究用鶏舎として冬季を除く3クール飼養、鳥インフルエンザに配慮し、天井にカメラ45台を設置、光の色の違いによるニワトリやひよこへの影響をオンラインで監視し、卵や肉質の変化について研究する。
市民との交流もできる馬エリアでは、体育館を「屋内馬場」に、弓道場横のスペースを「屋外馬場」にそれぞれ改修。20頭規模の厩舎を新築し引退競走馬のセカンドキャリアの創出、獣医学生の実習やホースセラピーに活用。
乗馬体験、ホーストレッキングコースやクラブハウスなども新設し、関係人口の増加を目指す。
写真=森山衆議院議員(左)揮ごうの石碑除幕
地方創生エリアとして、校舎を「教育・連携棟」、「管理・研究棟」、「宿泊施設(学生・研修者向け)」に改修。地域交流棟にはオフィスを5室提供し、畜産業に限らず様々な職種の企業にレンタル。
コワーキングスペースやチャレンジショップスペース、畜産農家等向けの研修会、家畜防疫講習会、市民講座などを開催。
また、地元の食材を使ったランチなどカフェスペースで、地域住民との交流を図る。
写真=馬エリア
SKLVでは、将来の畜産業・獣医療を担う人材の育成、新たな産業の創造、交流人口の増加を目指し次の事業等を行う予定。
〈将来を担う人材育成・確保〉
国際的な獣医師の育成輩出、産業動物獣医師の確保、子どもへの体験学習を通して将来の畜産人材確保、動物福祉に配慮した家畜飼養管理の実証と教育。
〈畜産技術者のスキルアップ〉
防疫や衛生管理のスキルアップ、次世代閉鎖型畜舎の研究開発、L5G環境によるスマート畜産の実践。
〈産業の創出・技術革新の推進〉
レンタルオフィスや共同研究ラボを整備、曽於市にとって新しい産業を創出。
〈交流人口の増加〉
馬や産業動物と人との新たな関係による交流人口の増加、アニマルセラピーによる福祉政策との連携。
写真=学生・研修者向けの宿泊施設
鹿児島大学では、令和元年にヨーロッパの獣医学教育認証であるEAEVEをアジアの大学で初めて取得。
SKLV内に核となる南九州畜産獣医学教育研究センターを設置し、共同獣医学部の特任教授など5人が常駐。
学生が鹿児島市のキャンパスなどから拠点で一定期間滞在したり、同大学が協定を結ぶ獣医学部がある全国の大学からも学生を受け入れ、年間300~500人の利用を当面の目標にしている。
写真=カフェスペース
曽於市では、同市が抱える大きな課題の1つは「人口減少」であり、市の発展のために就業者の約21%を占める一次産業、その中でも基幹産業である畜産業を持続的に発展させることに繋げ、市外から新たな人の流れを作り、魅力的なまちを目指す。
また、拠点を活用した独自の地方創生関連事業として、財部駅~拠点施設までのまちなみ景観やスマートモビリティ導入の検討活性化、民間所有の空き店舗活用、市内外の児童・生徒による体験型修学旅行誘致を目指している。
写真=工事関係者に感謝状
この日は関係者ら約250人が出席、曽於市の五位塚剛長が式辞。共同事業代表の国立大学法人鹿児島大学の佐野輝学長があいさつ。
工事関係者に感謝状贈呈があり、森山裕衆議院議員らが来賓祝辞が開設記念式典が終了。
テープカットや記念碑の除幕もあり、内覧会では広々とした施設を見学、畜産や獣医学の充実と地域活性化に大きな期待が掛けられていた。