2024年07月25日 10時25分

《大隅点描 》

タカクマムラサキ咲く~絶滅危惧1Aで希少だが香り高く

 タカクマムラサキ(シソ科)の自生地は、国内では鹿児島県種子島と宮崎県南部、そして筆者が2021年12月に高隈山系刀剣山山ろくで発見した1ケ所を含める3ケ所のみで個体が少なく国(環境省)絶滅危惧1A類にランクされている。

 戦前の記録として高隅山自生地として標本は存在するが、戦後の高隈山調査記録では発見例はなく、研究者の間から台湾産の混入ではないかとの疑いが持たれていた。

 筆者も高隈山系を登山する中、発見に至っていなかった。
 しかし一方で、このタカクマムラサキ自生地のすべてが、霜の降りない亜熱帯の明るい樹林帯に自生していることが分かり、筆者はあえて高隅山麓の垂水側の人里に近い山林を3年かけて調査を続けていた。

 そんな中、人里に近い刀剣山山麓にて株を発見、さらに2022年1月にほぼ同じ場所で2株を発見した。

 このうち1株を調査研究用に種の保存も考えて生採集した。

 現在では保存可能な状況まで目的を達成し一応の生態系特徴を調べ終えた。

 タカクマムラサキの大きな特徴として1年を葉と枝に強い粘気があり、指で触れただけで香りの成分が移ることである。

 その香りは酒類「ジン」に近く、他の樹木ではほとんど体感することの少ない特徴を持つ。
 一方で香りが高い分、昆虫類の発生により被害が高く、中には香りに酔いしれて動けない昆虫もいる。

 冬季は霜、雪は要注意で1年を通して管理が大変である。花の開花は7月中旬から8月下旬まで続くが花の咲き方は同属のムラサキシキブと同じである。

 花は1日花で開花時は紫、終花は淡紫色。花冠は浅4裂し、大きさ3ミリごど。オシベ4本は花冠から3ミリほど飛び出し、メシベ1本が中央から長く飛びだし柱頭の先が広い。小花が群れとなって花床の上で踊っているように見え、メルヘンの世界へ誘う。

 ムラサキシキブ属は以前はクマツヅラ属であったが、植物DNAに基づくAPG分類体系の移行によりシソ科に移った。

 大隅の自然、歴史研究
 坂元二三夫

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