《大隅点描 》
甫与志岳のヒコミツバツツジ 全国的にも多種多様性に富む
高隈山地1700回、肝属山地1400回、人に話せないほどの登山回数を重ねる中、肝属山地のミツバツツジの種の多さには驚きを隠せない。
これまで発見したミツバツツジ類については、名称(仮称)をつけ、写真、標本を残している。ここでは略する。
今回紹介するのは、甫与志岳北尾根とその斜面で、13年前と10年前に発見した2本だったものが、4月29日に4本目を確認し、当時(仮称ヒコミツバツツジ)としていた。

ヒコミツバツツジの名は、国見山、黒尊岳、甫与志岳3山を山幸彦が有効したとされる説に因む。
そのヒコミツバツツジの特徴を見ると、葉の形状はオオスミミツバツツジに似るが、葉面は毛深いものの葉柄には毛が生えない。
オオスミミツバツツジは葉柄に毛が生える。
葉柄は1㌢と同等である。一方キリシマミツバツツジの葉柄は2㍉前後である。
花色は赤色でキリシマミツバツツジに似て花弁上側には斑点はない。
オオスミミツバツツジには斑点がある。

幹は灰褐色で直径10㌢から40㌢と巨木化し、高さ6㍍くらいで人が登ってもびくともしない。
巨木化はオオスミミツバツツジに同じであるが、オオスミミツバツツジの幹は茶褐色である。
一方、キリシマミツバツツジは巨木化しない。
このように、ヒコミツバツツジには、他のミツバツツジに比べ大きな違いが見られる。
現状では肝属山地におけるミツバツツジ類はオオスミミツバツツジ、キリシマミツバツツジ、ハヤトミツバツツジの3種となっているが、しかしこのように肝属山地だけでも分類にとって9種に及び全国的に見ても多種多様性に富むところから、現地での調査を続けている。
写真はヒコミツバツツジを甫与志岳山頂を入れて開花状況と幹の大きさを現わしている。
大隅の自然、歴史研究
坂元二三夫