《伝統 》
今年は下高隈地区が勝利し豊年満作に~鉤引き祭り
二股のオスカギとメスカギのご神木を掛け合い、勇壮に引き合って今年の豊作を祈願し勝敗で作物の吉凶を占う、「日本一のカギ引き祭り」が令和6年2月18日、鹿屋市上高隈町の中津神社で行われた。
新型コロナウイルス感染対策で祭りは中断し、4年ぶりに開催された。
今年は下高隈地区が勝利し、下高隈地区は豊年満作になると占った。
まだ夜が明けぬ早朝6時過ぎ、上高隈地区の人々は瀬戸坂からメスカギを、下高隈地区は黒坂からオスカギを切り出した。それぞれの地区公民館まで神木は運ばれた。両地区の公民館では婦人が数日前から調理して朝食を作り、太鼓・三味線で盛大に出迎えた。豚汁と煮しめをみんなで美味しく食べた。
両地区の御神木は、昼前に神社前の長い階段を駆け上り、めでたくオスカギとメスカギは境内に担ぎ上げた。
昼食が終わった0時30分から神社境内で奉納芸能が始まり、ジャンベ演奏や重田棒踊り保存会の棒踊り奉納があった。
午後2時になると境内は身動きがとれないほどの人が集まり、いよいよカギ引きが始まる。
境内に中央の白線が引かれた。木の股を利用した長さ1㍍程度のカギで、引き手の足が滑らないように中央線に沿って溝が何本も掘られた。
神木のオスカギとメスカギは境内の中央に運び出し、激しく地面に3回叩きつけた。
これは「さよんどし」とよばれ、「山の神様、春が来ました、冬の眠りから目覚めてください。今年も豊作になりますようお願いします」と人々は祈願した。
中央線上に両カギが引き出され、オスカギが下に構え、メスカギを上からオスカギに掛ける。引き手は焼酎を飲んで気勢を上げており、なかなか掛けることができず、時間がかかった。例年はカギ掛けが荒れ、喧嘩になって警察官が出動することもあったが、今年は穏やかだった。
時間は無制限で、1㍍以上引き込み2勝すると勝つ。
カギが掛かると一斉に引き合う。一回目はカギがかかったが、なかなか引き込むことが出来ず、異例の引き分け。
2回目もなかなかカギが掛からず、ようやく掛かると激しく引き合った。
お互いに力の続く限り引き合い、下高隈が引き込み勝利した。
下高隈地区がカギ引きに勝利し、下高隈地区は豊年満作になると占った。
カギ引きが終わると境内に台車の上に乗せた模型の黒牛が登場し、氏子が牛の模型を引いて境内を田に見立て耕した。
神官を先頭に境内を、神社関係者が反時計回りに隊列を組んで神歌を歌いながら廻り、苗に見立てたツタカズラを参拝者に配り、やぐらの上から餅まきして祭りは終わった。
勝利した下地区の上ノ掘隆二大将(51)は「4ぶりの開催でプレッシャーを感じたが、1回戦で引き分けになった。2回戦で勝利して良かった。オスカギは負けが多いので心配したが、4年前もオスカギで勝利し、今年もオスカギで勝利でき、連勝できて良かった」と話した。
下高隈地区の時村大志さん(36)は「毎年祭りに参加し、4年ぶり開催の今年も勝ってよかった」と、下高隈地区の踊橋幸治さん(47)は「毎年参加しているが、今年は負けた感じはしない」と話した。
実行委員長の黒木次男さん(74)は「一週間前に高隈中の生徒さんが神社の清掃をしてくださり、祭りは無事に終わました。みなさんが一年間無事に過ごせるよう祈念します」と話した。