2024年09月29日 11時15分

《おおすみ雑記 》

環境負荷軽減、地域ブランド化にも繋がる農業

 有機栽培やオーガニック農法など、いろいろ調べていく中で、キューバ共和国では、家庭菜園的に庭先、あるいは花壇のように自分たちで野菜を植えて、それがオーガニック農業大国になったという文章をどこかで目にしたことを思い出した。

 キューバのオーガニック農法は、そのことを意識してというよりも、米国によるキューバに対しての禁輸措置など経済制裁が、形や程度を変えながら今も行われ、物が安定的に入ってきにくい状況が続いているので、そうせざるを得ない環境にあるというのが一つ。

 社会主義国で、最低限の食料は配給されるが、それでは足りなく自分たちでもとうもろこしや黒インゲン豆、サツマイモ、稲と飼料など同じ畑で輪作し、異なる作物をローテーションすることで、土壌中の養分のバランスを整え、化学肥料なしでも持続的な農業ができるらしい。

 収穫した後のとうもろこしなどの茎や葉を一ケ所に集め、堆肥を作り畑の栄養となり、トラクターも使わないというオーガニック農法。

キューバのような持続的農業

 前々回書いた有事の食料政策ということを考えると、同じ作物を大量に同じように作り続け、土壌養分のバランスが崩れたところを肥料等で補うという産業的な農業だけでなく、キューバのような持続的農業もありかなと考えたりもする。

 以前、映画「モンサントの不自然な食べもの」について書いたことがあったが、そこではここ100年来の「タネ」を介しての食の経済構造がどんなに恐ろしいものになっているかを描いたものだった。

 メキシコの主食トルティーヤだが、自由貿易という名のもとに米国から工業化された農業で作られた大量のトウモロコシが押し寄せ、その在来種が絶滅の危機にさらされている現状が映し出されていた。

 私たち日本の農業も、同じ作物を同じ畑で繰り返し作っていくという農法が常識となって、何の疑いもなく続けている。そこには化学肥料や農薬が欠かせないものとなっている。それは言わば工業的な資本主義的農業とも言うべきか。

 考え方としては、キューバのように自分たちで食べる分は、自分たちで作り、自分の口に入る分として、どんな作り方がいいのか土壌養分のバランスを考えて自然な形で作る。

 私たちの周りの農家の中には、自分たちが食べる分と、流通させる分とは、化学肥料や農薬の使い方を変えて作っていると聞いたりする。

掛け声と現実とが嚙み合わない

 今、国の施策として大規模農業化や輸出、ICT化を進めている。
 それは資本主義的農業に繋がるもので、映画「モンサントの不自然な食べもの」では、自由貿易という名のもとで工業化された農作物は経済構造的に保護され、メキシコ政府はメキシコの小さな農家の助成金や支援をカットしていったことで農業の根幹が崩れていったという。

 いろいろ考えてみると、形態は違うにしても、日本の農業も結果的には、一緒の構造になってやしないか。
 農業政策そのものが資本主義的農業がベースにあり、構造的に農の形が変えられてきたので見えにくいのか。
 映画の中でも「食料に関しては、自由貿易という概念は成立しない」と訴えていて、それは世界共通のことだと思うのだが、資本主義社会では農業もその枠組みに入れられているので、そこだけに固執していると、仮に有事となった場合には、国をまたいでのことで、そこへの対応が出来にくくなる。

 一方で国は、みどりの食料システムで有機農法も推進しましょうと言っているが、手法としては資本主義的農業がベースにあるので、掛け声と現実とが嚙み合わない。

 発想を転換させて、大規模化や輸出、ICT農業は、資本主義的農業で進めながらも、例えば私たちの子どもたちが口にする学校給食は、安心安全を優先させて、地域の中で減農薬、化学肥料を使わないような食材を、子どもたちのために使用する。

 有機農業が目標でなく、なんのために誰のために有機農法を推進するのかということが先にあり、その手法を考え、そうしたことを地域の中で進めていく。

環境保全型農業によるまちづくりを宣言

 例えば2012年に環境保全型農業によるまちづくりを宣言した千葉県いすみ市では、有機栽培を行う農家を支援し、2017年10月に学校給食をすべて有機米に変え、相場よりかなり高く買い上げ農家を守り、しかも2022年10月には給食費を無償化した。
 地産地消による地域の活性化や環境負荷の軽減、地域のブランド化にもつながり、農業の新たな活路としても注目されている。

 今、全国各地で給食費を無償化が進められているが、なんのために誰のために無償化をするのかということから考えていく。

 学校給食だけでなく、地域の中で循環させる農業を、資本主義的・企業的農業としっかり棲み分けして考え、双方をきちんと地域の中で推進していく。
 そうすることで農家の後継者不足も解消させることに繋げていく。(米永20240929)

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