2024年07月03日 08時03分

《大隅点描 》

桜島アカホヤ火山灰~発見遅れ、勘違いもあるのでは…

 アカホヤ火山灰は写真に見るように気橙色で一度見たら忘れられない特徴を持っている。アカホヤの名は戦後の頃まで使われていた石油ランプのガラス製の筒が赤々と照らされることからホヤといい鬼界カルデラ起源(約7300年前)の火山灰の色調がホヤに似ていることからアカホヤの学名を持つ。

 今回紹介するアカホヤは姶良カルデラ起源(約3万年前、旧石器時代)の、のちに大噴火した火山灰がアカホヤに似て大隅半島のみに広く分布し桜島に近いほど厚さが増していることから、筆者が大隅火砕流(約2万4千年から1万8千年)として位置づけ、桜島アカホヤ火山灰と名付けている。

 このアカホヤ火山灰堆積に見ると、垂水市高峠で厚さ12㍍、鹿屋市有武町10㍍、大崎町持留二子塚5㍍、志布志市志布志町夏井4㍍、肝付町波見4㍍、鹿屋市吾平町愛宕山4㍍、錦江町宿利原3㍍となっており、桜島誕生期の水蒸気爆発と推察され、南東宝面へ強い風が吹いていたことが分かる。

 写真は鹿屋市有武町で撮影したもので、その気橙色の鮮やかさが見て取れ、写真には見えないが、その下位に入戸火砕流に運ばれたシラス火山灰が堆積。そのアカホヤ火山灰の上に中石器・新石器時代の腐植土壌(厚さ20㌢)が黒い帯となって見られ、さらにのちの腐植土壌や池田湖火山灰、開門火山灰など現世の表土となっている。

 この地層の比較を見ても、いかに大隅火砕流が巨大噴火であったかを示している。姶良カルデラ内での噴火規模としては破局噴火であった入戸火砕流、妻屋火砕流に次ぐ噴火である。しかし、この桜島アカホヤ火山灰については鹿児島県地質図には、その地質分布の記名、記号も記されていない。
 その要因として限られた大隅半島のみに堆積し地中にパックされ、発見が遅れたことや、もう一つの要因として、この桜島アカホヤ火山灰が鬼界アカホヤ火山灰と勘違いされた可能性がある。
 
 桜島アカホヤ火山灰は、半軽石タイプで指圧でつぶれる和ら無いガラス繊維質で分布地によって粘土質で大隅地方では赤シラス、カマ土として知られる。カマ土はイロリ、カマド、赤レンガの原料として使われ、古くは土器(古墳、弥生時代)に使われている。

 筆者は、この桜島アカホヤ火山灰を昭和61年に発見し、これを知らしめるため、串良町誌にも記し発表している。

 大隅の自然、歴史研究
 坂元二三夫

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