2024年04月30日 18時42分

《おおすみ雑記 》

消滅可能性自治体、その地域、地方のせいだけか…

 大隅半島でも垂水市、曽於市、錦江町、南大隅町、肝付町が挙げられた民間組織「人口戦略会議」が示した「消滅可能性」があると分析の全国744自治体。

写真=人口ビジョン2100資料から

地方と国におけるシステム自体はどうなのか…

 2020年から50年の30年間で、子どもを産む中心の世代となる20~39歳の女性が半数以下に減少する自治体は「消滅可能性」があると定義している。 

 東北地方と北海道は6割以上、青森と秋田では、8割以上の自治体が「消滅可能性自治体」という一方で、沖縄県については該当の自治体は無かったという。

 これらを受け、多くのメディアが、その実態や分析など行っている。
 論点はいくつもあると思うが、2014年に「日本創成会議」公表の報告書では、消滅可能性自治体は896だった。
 全国1741ある市町村の中で、これだけの数が該当するということは、この国の地方と国におけるシステム自体に欠陥があるのでは、そうした根底にあるものを考えた上で、この大きな課題解決に向かわないと、遠回りになるのではと感じている。

 一つには、この発表のベースになっている今年1月に「人口戦略会議」が提言した「人口ビジョン2100」に目を通してみて感じたこと。

 一つには、「消滅可能性」発表を受けて、大手新聞での「さらなる自治体の合併が必要になる」という論調に違和感を感じたこと。

疲弊していく一つの大きな要因

 まずは、この市町村合併。鹿屋市の歴史を見てみると、1941年5月に、 鹿屋町と花岡村、大姶良村が新設合併・市制施行により鹿屋市(旧)となっている。
 また、高隈村は鹿屋市と生活圏が一体化していることを理由として1955年1月鹿屋市へ編入している。

 そして平成の合併では、2006年1月に、鹿屋市・輝北町・串良町・吾平町が新設合併し、今の鹿屋市となり、旧輝北町・串良町・吾平町はそれぞれ地域自治区として設置された。

 市町村合併による利点はいくつかあるとは思うが、鹿屋市の例を見ると、建前は対等合併とも言われ進められたものの、現実はやはり本庁のあるところに機能や予算、職員等が集中、実質吸収合併になっている。

 昭和の合併時でも、直接取材は出来ていないが、例えば大姶良村役場があった場所は、役場を中心にして栄え、周辺では「てこしゃんせん(太鼓三味線)」も鳴り響いてにぎやかだったと聞く。

 時代が違うと言われればそれまでだが、行政機能、予算、職員等が消えたに等しい場所の周りからは、どんどんにぎやかさや人々も消えていく。平成の合併も全く同じだと思う。

時代に即した身を切る今の改革は本当か…

 国の財政も含めて、その方針に従わないと…とも言われる。平成の合併では、構造改革とか国家機構改革の一環などと言われ、時代に即した身を切る改革も必要だと思っていたが、しかし、20年近くたって現実はどうなのだろう。

 市町村合併による自治体再編が、地域経済や地域社会にいかなる影響をもたらしたかを考えると、地方のパイの中で過疎化や地域の中での人口減少に拍車を掛け、合併した小規模自治体ほど、そうした傾向に拍車が掛かっている結果となっている。

 一時期もてはやされたこの構造改革という言葉、日本の行く末には必要なこととプロパガンダされた。

 また、産業面でも規制緩和という合言葉のもと郵政民営化や、大店法改正が改正されトイザらスが日本初上陸など話題になったが、それによって郷土色、地域密着してきた店舗が消え、シャッター通りが増えていく一要因ともなっている現実。

 地方に住む私たちは、国の進めてきた構造改革や規制緩和、グローバルな市場競争原理、経済を中心としてきたことで、地球環境もだが、地方も疲弊。
 そうした政策こそを見直していかないと、この問題は根本的な解決にならない…大隅半島の自治体をぐるぐる回っている中で感じていることだ。

 なので、「さらなる自治体の合併が必要になる」というのは、地方の実態を理解しない上から目線ではないかと思う。

市区町村別「人気の移住先」ランキング1位は

 もし仮に鹿屋市周辺の自治体が、さらに鹿屋市と合併した場合、例えば垂水市は今年度一般会計119億8000万円、錦江町は76億9188万円の予算を持ち、それぞれ社会福祉や施設整備したりし、多くの職員も働いている。

 しかし、これまで合併をしてきた、特に実質吸収合併になった旧自治体のまちは、それこそ若い人たちが住みにくい、子育てがしにくい地域になり、地方での一極集中が進んでいくという現状。

 そして「消滅可能性」があると分析された全国744自治体の中で、もし合併があったとしたら、消滅可能性自治体は減るかもしれないが、本庁機能の無くなった地域は、合併をした数だけもっと疲弊していき、自治体によっては、そこを支えきれないという現実にぶち当たるのではないか。そこでは歯止めが利かない。

 昭和の合併は原体験はないが、平成の合併は、協議会や旧合併自治体の長にも直接会い話を聞いたりし、その流れをずっと追いかけ取材をし、そして現在の状況をつぶさに見て今、腑に落ちないものを感じる。

 もちろん財政や経済は大事であり、そこに視点を置きながらも、もちろんそこに裏打ちされるものがないといけないが、例えば長野県伊那町のように、通知表、時間割もチャイムもない公立小の「探究型総合学習」を実施している伊那小では、この町で教育を受けさせたいというファミリーが移住し、市区町村別「人気の移住先」ランキングTOP30のの1位になっているという。

 もし仮にこの町が周辺の大きな自治体と合併をした場合、そうはならないとは思うが、その新しい首長の考え方次第では、必要な教育予算が届かない可能性もある。現実にそうしたことが合併で起こっていて、さらに進めていくともっとこうしたケースも増えていくのだろう。

 平成合併時に、当初「第二次平成の合併」をすすめ700~800市町村に再編すべきだ…という話もあった。今でも消滅自治体になる前に早く合併すべきだという声も多いが、それはどうなのだろう。背筋がゾゾっとする。

 「人口ビジョン2100」の内容にも触れたかったが、ちょっと合併のことだけになってしまった。
 何を言いたかったかというと、構造改革や規制緩和、グローバルな視点、経済重視など従来の切り口でこの大きな課題を克服しようとしても、それでは行き詰ってしまうのだろう。

 人口ビジョン2100も様々な提案がしてあるが、委員の多くは、〇〇大学とか大企業の方々。もっと地方、地域目線、この地方に住んでいる若者や女性の視点やこれまでとは違ったベクトルからの内容ももっと欲しいと感じた。不可能だろうが、この大隅半島に1年くらい住んで欲しい…と思ったりもする。それより地方に住む私たち自身がもっともっと声を出していくべきか…。(米永20240430)

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