2024年06月05日 17時40分
《大隅点描 》
卯(う)の花の匂う垣根に~唱歌にもあるウツギの今は…
「卯(う)の花の匂う垣根に~」と夏の始めのころに咲く花で知られる古い唱歌。
この花はウツギ(アジサイ科)で、和名は空木または卯木とも書く。
名は茎が空洞であり、夏の始めの陰暦4日(現在の4月下旬から6月上旬)を卯月と呼び、このころに咲く花がウツギ(卯木)に由来。
歌には花に香りがあるようになっているが、実際のウツギの花には香りはない。
昔はどの家でも卯月を大切にし、ウツギを好んで垣根としていた。また、昔はどの家でも豆腐(方言でおかべ)を作り、その搾りかすの白い「オカラ」を卯の花に見ててていう。
豆腐を作る段階でナベ底が黄色に焦げるが、その焦げが甘味で子等に人気でおやつにもなっていた。
もしかしてウツギの垣根のそばで豆腐やチマキを作り、その甘味の香りが「卯の花の匂う垣根~」であったことが推察される。思い遠きであろうか。
写真は平家落人集落で知られる鹿児島県錦江町段集落の一角にサラサウツギだけの長い垣根があり花を咲かせていた。
古い時代から栽培された品種で花は、重弁で花弁の外面のみが紅紫色で内面の重弁は白色で卯月にふさわしい花である。
今ではウツギの垣根も家庭での豆腐造りも姿を消した。
大隅の自然、歴史研究
坂元二三夫