2024年08月06日 21時30分

《雑草 》

開戦に至らず回避するタイミングは何度もあったという

 敗戦後79年目の日が近づいてきた。
 広島に原爆が落とされ、そして長崎。太平洋戦争について、これまで戦争の被害や、その悲惨等が報道され、そして重たい口を開いた戦争体験者による戦争の実態が明かされるようになり、ただその体験者も数少なくなってきた。

 最近では、これまで機密とされてきた文書や、研究者によるその成果が発表され、今回の戦争が起こったメカニズムや各国の思惑などが分かるようになってきて、重たい戦争体験者の言葉とはまた違った戦争の側面を知ることができ、繰り返される戦争や紛争だからこそ、その歴史をしっかり学んで、その学んだことを後世にしっかり伝えることが、今を生きる私たちの一つの使命ではないかと感じている。

 特に、太平洋戦争については、戦争に直接関わり戦った相手国だけでなく、第一次世界大戦を経て、第二次大戦開戦に踏み切り勢いのあったドイツへの過度の傾倒。

 そして日中戦争(支那事変)との関わりの中で、中国によって米英を巻き込むための徹底した情報戦が行われていたことに対して、日本は偏った情報に加え、軍部のセクショナリズムによって俯瞰した大局的な判断に欠けていた。

 よって開戦に至らずこれを回避するタイミングは何度もあったはずだったが、ある意味、中国の諜略に日本が誘導され、中国が日中の戦争に米国を引き込もうとした策略が功を奏し、くず鉄の日本への輸出禁止、続いて石油と、情報戦で日本を開戦まで追い込んでいった。

対日攻略が功を奏した大きな日

 ドイツへの傾倒に対しては、特に戦前から戦中にかけて駐ドイツ特命全権大使を務め、日独伊三国同盟締結の立役者とも言われた大島浩は、ナチス政策に心酔、ドイツを一方的に信じ続け一貫して親独政策を推進し、大戦末期に至ってもドイツ有利との誤った戦況報告が流され続けたという。

 中国に関しては、当時の蒋介石の膨大な日記の全貌が明らかにされ、その外交史料から、満州事変、盧溝橋事件後も日本の勢いに対して日中だけの争いでは中国が不利になるとして、日中に米英が絡んでいくような国際化をもくろみ、日本軍の上海侵攻の一端を中国自ら演出。

 そこでは周到に対抗戦の準備をし、他国も無視できないような介入していくであろう状況を作ろうとしたが、米英は大きく動かず、上海だけでも20万人の犠牲を出し陥落。蒋介石のもくろみは失敗したかのように思われた。

 しかし、日本が過度に傾倒し日独伊三国同盟を締結したことで、米英も動き出し、日本が米国へ宣戦布告(真珠湾攻撃)せざるを得ない状況にまで至ったという歴史の一端が分かってきた。

 1941年12月8日の蒋介石の日記には、抗日戦略の成果は頂点に達したという内容が記されているという。

戦争での新事実が発見、発表され歴史観も変化

 ドイツに対しても中国に対してもだが、俯瞰できないそうした体質が、完膚なきまで叩かれた戦争の開戦へと導き、戦争が始まってからも精神主義やセクショナリズムが強く、開戦を踏みとどまる判断ができるはずのタイミングを逸したその重たい流れがさらに戦争を長期化させ、しかも全戦没者のうち6割もが戦病死・餓死。犠牲者の8割が最後の1年だったとも言われている。

 今現実にあるロシアーウクライナ、イスラエルーハマスの戦争もいったん始まると、収めるのは難しいということを実際体感している。
 私たちが小中、学生の頃学んだ戦争、そして戦後50年の時、さらには戦後80年になろうとする時と、戦争に対する見方が、大きく変わってきているような気もする。

 それは感じる年齢にもよるのだろうが、戦争に対する事実が新たに発見、発表され、歴史観もだんだん変わってくる。

 近代化が進んでからの日本でも、日清、日露、第一次大戦、日中戦争、第二次大戦と大きな戦争を続けてきた。

 これら歴史を学ぶことで、戦争の悲惨さや残酷さだけでなく、なぜこれらの戦争が起こるのか、起こってしまうのかを知ることによって、また思いが変わってくると思っている。

 特に、特攻基地のあったまちとして、その歴史をもっと伝えていくことも必要なのか。

情報伝達~得体のしれない怖さも

 話がそれるかもしれないが、戦争が起ころうとするとき、戦争の最中でも、新聞やラジオ、テレビやムービーによるプロパガンダが大きな影響を持つ。それが間違ったことを伝えていたらなおさら。

 そして今はSNSというある意味制御できない情報伝達が、より怖さを感じる瞬間も増えてきている。
 これが人々の争い、戦争に関わってくると極端に偏向した情報に発展していきそうで、得体のしれない怖さも感じる。

 そういった意味でも、こうした歴史に絡む情報や考えももっと伝えていきたいと思う。
 学べば学ぶほど、今のこの世界の潮流は危うさを感じるし、ブラックマンデー以来の株価の大暴落、持ち直していると聞くが、こうしたことが続いていくと、さらに危うさが強まるのでは…と思うとなおさら。

 広島原爆の日で黙とうをし、子ども代表のことばと松井市長の平和宣言を聞いて、この日感じたこと。(20240806米永)

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