《雑草 》
このバックグラウンドで指くわえ、手こまねいている…
昨年末には、鹿屋肝属法人会青年部による設立40周年記念事業で、ホリエモンこと堀江貴文氏による「鹿児島の地方創生・地域活性化、これに宇宙事業をどうからめるか?」という演題で講演があった。
日本での民間による宇宙産業の最前線で活躍しておられる堀江氏の講演は、とてもタイムリーだと思った。
講演では、ロケット以外の地域活性化、デジタル社会、核融合発電などや、質疑応答では教育関連の質問もあったりで面白かったが、やはり、鹿児島の地方創生・地域活性化、これに宇宙事業をどうからめるか?…ということ、これは、ロケットが東側の海に向かって打ち上げられるので、鹿児島本土では大隅半島の太平洋側からの打ち上げということになり、そこを中心に考えると鹿児島=大隅半島で地方創生・地域活性化に繋げていくという講演だったのか…。
質疑応答では、肝付町の永野町長が、堀江氏に内之浦での民間打ち上げのラブコールを送っていた。
ただ、内之浦はがけ地が多いので、射場としての平らな土地が必要であり、それが前提、今の段階では無理だと答えていた。
写真=昨年11月のホリエモンによる地域創生と宇宙に関する講演
質疑応答では、肝付町の永野町長が、堀江氏に内之浦での民間打ち上げのラブコールを送っていた。
ただ、内之浦はがけ地が多いので、射場としての平らな土地が必要であり、それが前提、今の段階では無理だと答えていた。
今、国内のロケット発射場は、JAXAの内之浦と種子島、そして民間の北海道大樹町、和歌山の串本町の4ヶ所があるが、民間ロケット発射場は、これからまだまだ必要とされていくはずだ。
北の大樹町、中央の串本、そして今後は、JAXAによる宇宙科学先進地としての南の大隅半島が最適地ではないのか。
昨年3月には経済産業省による「国内外の宇宙産業の動向を踏まえた経済産業省の取組と今後について」が発表されている。
近年の宇宙開発のトレンドは「官から民へ」
その中では、近年の宇宙開発のトレンドは「官から民へ」で、冷戦以降、技術の民間開放等により、宇宙開発の中心は官から民へ。
日本の宇宙開発は、長年、大手重工・電機メーカを中心に進められてきた。近年は、大学等から約100社の宇宙ベンチャーが勃興。市場規模は約4兆円。政府は2030年代早期の倍増、約8兆円を目指している。
大規模災害への対応、防災・減災及び国土強靭化(観測・通信)や、2050年カーボンニュートラルの実現等、地球規模の社会課題解決に対して、宇宙システムの貢献が見込まれている。
通信・放送・気象といった成熟アプリケーションのほか、安全保障等の成長アプリケーション、自動化・遠隔化などの新興アプリケーションが台頭しつつあり、様々な産業分野における宇宙利用の広がりがある…としており、そこに大きな予算もついてくるのだろう。
南北に長い日本、北海道より南九州
それにロケット発射場は、赤道に近いほうが地球の自転速度をロケットの速度にプラスすることができ、上昇しやすく、赤道に近いほど修正に必要なエネルギーが少なくて済むという。なら、南北に長い日本、北海道より南九州ではないか。
今、宇宙に関しては、宇宙輸送や月旅行、火星基地などが耳障りよく注目を浴びている。衛星の打ち上げを考えると地味なようであるが、しかし、通信・放送・気象や安全保障等、自動化・遠隔化などを考えると、私たちの毎日の生活に密着したものがあり、衛星打ち上げのほうがニーズが大きく、さらに地味な宇宙技術研究を昭和37年から60年以上続けてきた内之浦、大隅半島であり、その存在はより大きい。
いま、この世界の、国内の動きに指くわえ、手をこまねいているのは、この地域、鹿児島県の大きな損失ではないか。
しかも、肝付町には、宇宙に関わる仕事、研究を目指し楠隼校に全国から志ある若者が集まり、東大などに進学している。
さらには、世界最高レベルの衛星データで未来を開拓する…というQPS研究所が福岡を拠点にし、世界トップレベルの高精細小型レーダー衛星「QPS-SAR」を開発。夜間や天候不良時でも任意の対象を高分解能・高画質で観測できるSAR画像を提供しているという。
その役員らが内之浦射場に視察に来て、別な機会には楠隼高での授業を行うなど交流もあり取材もした。
そうした人材やこれだけの歴史的な背景があるのに、どうしたことなのだろう。
全国のどこより宇宙に近い…と胸を張って言える
ホリエモンが、地方創生に宇宙事業をからめてという話をする中で、逆に考えると、射場用の平坦な場所を、県や大隅半島全体で準備、提供していくような仕掛けができるとなると、勃興している約100社、さらに増え続けていくであろう宇宙ベンチャーのどこかが、触手を伸ばす…ということにならないか。
これだけの背景、バックグラウンドを考えると、全国のどこより宇宙に近い…と胸を張って言えるだろうし、これを活かさない地域に、地方創生はできないのだろう…とも考えたりする。
経済産業省 製造産業局 航空機武器宇宙産業課 宇宙産業室による「国内外の宇宙産業の動向を踏まえた経済産業省の取組と今後について」を、もっと掘り下げてみたい。(米永20240115)