2024年10月09日 14時11分

《雑草 》

日本人だからこそ世界に発信できるメッセージを

 今の国際情勢を見ると、言葉で「平和」を唱えても絵空事ではないか、「空」や「無」ということが何になるの、それらを学問として学んだわけではないでしょ、それが「平和」になぜ繋がるのか…と、非難を受けるかもしれない。

 ただ、ロシアとウクライナの戦争がここまで長引き、イスラエルとハマスの戦争が周辺国まで広がっていく様など現実にある今だからこそ、人はもちろん、自然に畏敬の念を持ちながらその宇宙観のようなものを自分の中に持つことで心が落ち着き穏やかになる人たちが多く住む地域や国民性があるとするならば、今ある紛争や戦争の現実を反面教師として何か違った発想や行動ができるのではということを、人の力として信じたい。
 それが「空」や「無」ということにも繋がる。

 こうしたことを書くと、宗教的…と思われるかもしれないが、日本人の中にある「道」という考え方、宗教や仏教でなく、ここでは仏道や仏法という意味で伝えてみたい。

 ただ、そこに至るまでのルーツとなる仏教について少しだけ触れてみたい。

これと言って確かなものは一つもない

 日本で最初に本格的な仏教思想を説いたのは聖徳太子だといわれ、憲法十七条は、儒教とともに仏教をベースとしたものであったとされている。

 そして仏と神を一体で不可分とする神仏習合。人間のみならず、動物、植物、更には山や川の自然までも仏性を内包している世界観があり、仏教伝来前から日本に根付いていた自然信仰(アニミズム)が仏教に反映したものとされている。

 そして念仏を唱えることで救われ、坐禅の修行をするだけで悟りが開けるとするなど、座禅とか瞑想、精神集中し自分を見つめることで、因縁果をみる力が備わるという。

 それは、私たちが日常で生活しているなか、自分自身のことはもちろん、周りにある物や事は、日々その瞬間で変化し移りゆき、これと言って確かなものは一つもない。
 これらを「空」と言い、だからこそ、一つのことに頑なに執着したり、過去の出来事にこだわったりするのでなく、その瞬間で日々新たに、現状から少しでも前に進んでいくことで、開けてくるものがある…というとてもポジティブな言葉でもある。

空や諸行無常をポジティブに捉えていく

 これは、この世のすべてのものごとは、けっして固定的なものではなく、常に変化し生滅するもの…という「諸行無常」に繋がるもので、日本では、平家物語の諸行無常の響きありという文章の影響が強いのか、何か儚いものを連想させる。
 しかし実は、「空」とともに、例えば今、この文章を書いているその瞬間、そして書き終えてペンを置いたときに、書き始める前とは一歩前へ進んでいる新しい自分がいることを感じる瞬間があるとすれば、常に変化するということを前向きに捉えることができる。

 そしてもし、今の自分を苦しめている何かがあるとするならば、因縁果をみる力、何が原因で今のこの自分が存在しているのかということを、「空」を感じながら瞑想するなど精神集中、苦しみの因を滅し新たな自分を生み出していくというように、諸行無常や空をポジティブに捉えていくと、苦となる執着や煩悩から解き放たれる。

 さらにこの「空」の境地というのは、無智亦無得(むちやくむとく)、「知恵も悟りも実体はない、それは永遠に未完なのだから」という「無」にも繋がるという。これはこの地球上で絶えず繰り返される紛争や戦争を見ていて感じる。
 つまり、完璧なゴールというものも無いので、常に自分の心を一段上に上げていく。

日本独自の世界観、宗教観

 そんな「空」や「無」ということも含め私たち日本人は、人の営みだけでなく、動植物、山や川、海の自然までも内包し、四季折々のお祭りや伝統行事の中で、また自然の中に八百万の神を見い出し、それを神仏習合という形など日本独自の世界観、宗教観を持って長い間過ごし、安寧に生きることが出来ていた。

 それが今、世界各地で紛争や戦争が繰り広げられ、政治的、民族的、災害も含めた難民が増え続け、地球環境も壊し続けている時代となり、テレビや新聞でのニュース、事件を観るたびに悲しいというよりも、怖さを感じる。

 日本人として、そのアイデンティティを考え、戦争というものは国家間のことで、一国民として戦争の始まりと終わりには関われないが、もし戦争となった場合、多く犠牲となるのは国民であり、日ごろから日本人の精神のようなもの、本当は当の日本人が忘れ去っている感も否めないが、そこにもっと深く寄り添うことで発信できるものがあり、他国へのメッセージにもなる。

軍備による抑止力もだが国民の意志も

 それは独裁国家ではなく、国民主権、民主主義の国として、戦争が起こらないように軍備などによる抑止力もだが、国民の意志としての日本人の世界観や宇宙観を世界に発信していくことも大事なことだと感じている。

 ただ、民主国家の欧州でも極右の政党が第1党になるなど躍進したり、米国大統領が誰になるかによって、世界の秩序や構図が変わる時代でもあり、だからこそ、戦争の歴史をしっかり学び、国として日本人として、日本人だからこそ世界に発信できるメッセージを日々新たに持ち続けていく努力が必要だと思う。

 平和は自然状態ではなく、平和状態は新たに自分たちの手でお互い努力して創出しないといけない…からだ。(米永20241009)

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