2024年11月12日 11時47分

《宇宙 》

液体燃料でロケット発射実験は世界初、独自のデータ回収も

観測ロケットS-520-34号機実験の概要説明及び機体公開

 14日に内之浦から打ち上げ予定の観測ロケットS-520-34号機実験の概要説明及び機体公開が、2024年11月11日、JAXA内之浦宇宙空間観測所で行われた。

  身近な液体燃料(エタノール)を使いロケットを飛ばす技術は、世界各国で競われ開発されているが、実際にロケットを発射しての実験を行うのは、今回が初めてで、そのデータを独自のシステムで回収。
 成功すると世界から大きな注目を集めることになるという。

写真= ランチャーにセットされた観測ロケットS-520-34号機を内之浦宇宙空間観測所にて撮影=(11月11日・JAXA提供)


 概要説明の登壇者は次の通り。
 JAXA宇宙科学研究所学際科学研究系教授、観測ロケット実験グループ長で、鹿児島宇宙センター内之浦宇宙空間観測所の羽生宏人所長
 
 名古屋大学未来材料・システム研究所の笠原次郎教授

 JAXA研究開発部門第一研究ユニットの中尾達郎研究開発員。

 観測ロケットS-520-34号機実験「液体推進剤回転デトネーションエンジンシステム飛行実証実験」「インフレータブル型データ回収システムRATS2」の概要説明および質疑応答があり、観測ロケット機体公開もあった。

 今回の打ち上げは、S-520-31号機でのデトネーションエンジンシステム(DES)の宇宙実証の成功を踏まえ、液体燃料(エタノール)と酸化剤(液化亜酸化窒素)を用いた旋回型デトネーションエンジンシステム(DES2)を開発。

 実際に宇宙空間で作動させ、その推進性能を評価することを目的とする。

 DES2の作動中に取得された大容量データ(デジタル画像)は、搭載するインフレータプル型データ回収システム(RATS2)にて回収する。

写真=インフレータブル型データ回収システムRATS2


 エンジンシステムの説明概要は次の通り。

 デトネーションエンジンシステムとは、燃料と酸化剤の混合ガスが爆発的に反応した際に生じる衝撃波(爆ごう波)を 安全かつ効率良く推力に変換するロケットエンジン技術。
 S-520-31号機により、宇宙での飛行実証に世界で初めて成功した。

 現在のデトネーションエンジンは、極めて高い周波数(1~100kHz以上)でデトネーション波を発生させることが可能になりつつあり、宇宙用エンジンとして実用化を視野に入れた研究開発が日欧米、アジアで活発である。

 また、地上試験において、その高い推進性能が各国で確認されており、高性能なロケットエンジンとして実用化が期待されている.

 さらに、デトネーションエンジンシステムが、打ち上げ振動・衝撃環境に耐え、D/B調整され、,高真空・微少重力環境下(スペース)にてエンジンを起動・停止し、かつ、安定作動することが、2021年7月に打ち上げられた観測ロケットS-520-31号機による飛行実験で実証された.

 S-520-34号機の実験では、S-520-31号機での燃料/酸化剤にメタン(CH4)ガス/GOXを用いた旋回型デトネーションエンジンシステム(DES)の宇宙実証の成功を踏まえ、液体の燃料(エタノール)と酸化剤(液化亜酸化窒素)を用いた旋回型デトネーションエンジンシステム(DES2)を開発し、実際に宇宙空間で作動させ、その推進性能を評価する。 

 デトネーションエンジンの利点
 〈より高い性能〉
形態が可能

 〈より軽いエンジン〉
 より高い燃焼器圧力の生成、より短い燃焼器長さ、より良い推進剤の混合、スロートなしの燃焼器、高周波数振動のみ卓越、より短いノズル長さ

 〈全く新しいエンジン〉
 より高い燃焼器壁面への熱流束、柔軟な形状構成とシステム統合

 インフレータブル型データ回収システムRATS2の説明概要は次の通り。

 インフレータブル型膜面シェル技術を適用した次世代大気突入システム「RATS2」を用いて、旋回型デトネーションエンジンシステム(DES2)の大容量実験データの回収を行う。

 観測ロケット実験において、高価な実験機や大容量データの改修要望が存在。

 2021年S-520-31号機にて実証されたデータ回収機RATSの2号機。
 インフレータブル型膜面シェルは収納時は直径16㌢程度の円筒内部に収まる。
 上空でガス注入・展開し直径1・2mまで広がる。
 軽量で大面積の大気圏突入機は、空気力を効率よく利用することができ、大気圏突入、緩降下、軟着水、海上浮揚の一連のシークエンスをシンプルなシステムで実現可能。

 RATS実験の意義
 RATS実験は今後も継続的に実施、観測ロケットの定常的なデータ回収運用の実現を目指す。
 観測ロケット実験の価値最大化に貢献。

 定期的に再突入実験を行い、インフレータブル型膜面シェルの製造技術を向上させる。
 貴重な実飛行データを取得することでリアルフライトにおける知見を蓄積。

 質疑応答のあと、観測ロケット機体公開もあった。

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