《宇宙 》
第一工科大学と肝付町とで宇宙産業人材育成包括的連携協定
学校法人都築教育学園第一工科大学と肝付町との宇宙産業に係る人材育成に関する包括的連携協定締結式が、令和7年5月20日(火)、鹿児島県庁かごゆいテラスで開催された。
宇宙×大学×地域 未来をつくる現場がここにある~肝付町…として、両者が宇宙関連分野において相互交流を深めるとともに、宇宙関連産業で活躍できる人材の育成と宇宙関連技術の振興、宇宙関連交流人口増加による地域振興を推進することが目的。

同協定の背景は次の通り。
▽宇宙基本計画(2023年6月)において、将来の宇宙分野の発展を支える次世代人材の育成、人材基盤の強化についても明記され、政府も人材育成・確保が喫緊の課題と認識
▽成長産業とされる宇宙産業の振興に伴い、宇宙関連産業人口規模も、現状約1万人から、2030年代に5万人超、40年代に10万人超が必要。
特に、宇宙産業の中核で支える高度技術者(研究・開発、設計)・技能者(製造、試験)に加え、データサイエンティスト育成も急務
▽2025年2月、内閣府が、ロケットや人工衛星の研究・設計・開発・製(※人数は、和歌山大学秋山演亮教授による宇宙政策委員会資料より)造・打上げ・運用・デザイン・提供等の従事者が身につけるべきスキルを「宇宙スキル標準」を定義。
今後、日本の宇宙産業における標準的な指針として、企業や自治体、教育機関等、宇宙に関わる様々な業界で活用されることを期待される
▽肝付町は、スペースサイエンスタウン構想改訂(2024~2034)において、「宇宙人材の教育拠点」を掲げ、宇宙のまちづくり推進課を新設(2023年)し、これまで様々な宇宙関連施策を展開。
また、鹿児島大学理工学研究科、千葉工業大、九州工業大、和歌山大学と連携協力協定も締結
▽さらに、2025年1月、埼玉県八潮市の陥没事故の契機に、衛星データ・AIを活用した水道管路の漏水リスク評価による点検の省力・省人化も期待され、衛星データによる地域課題解決も注目される

具体的な取り組みや今後期待されること
今回の包括連携協定締結による具体的な取り組みや今後期待されることは次の通り。
第一工科大学・肝付町、双方のリソースを持ち寄り、連携・協力
〈第一工科大学〉
▽1955年創立、全国でも数少ない航空工学科を有し、鹿児島県内で唯一の私立理系大学。
また、2023年、「MDASH(数理・データサイエンス・AIに関する知
識及び技術を体系的に教育する大学)」に認定
▽2026年4月「第一工科大学鹿児島中央キャンパス」開校。
「情報・AI・データサイエンス学科」に新たに「宇宙データサイエンス分野」を追加
▽学生の教育・研究活動と地域・産業をシームレスに結びつける「知のハブ」として機能し、未来の技術革新を支える人材育成を実現を目指す
〈肝付町〉
▽町内にJAXA内之浦宇宙空間観測所が立地し、60年超。宇宙応援の町民カルチャーに支えられる。
2023年に「宇宙のまちづくり推進課」を新設
▽スペースサイエンスタウン構想改訂(2025~34)にて「宇宙人材の教育拠点化」を掲げ、全国各大学との連携・協力を推進。
▽民間等と連携した再生可能エネルギー、ICT・DX(デジタル推進)、地域商社の取り組み等を積極的に推進
衛星データ活用及び宇宙教育活動における連携により「宇宙のまち」づくりを推進
①人工衛星・ドローンデータの利活用に係る地域課題解決に向けた検討・試行
AI・データサイエンス分野及び宇宙工学分野における研究・教育を強化、推進する第一工大と連携・協力することで、町の8割が林野面積を占め傾斜地も多い肝付町の地域課題解決に資する衛星データ・ドローンデータ利活用の検討を行う。
衛星データ・ドローンデータの実証フィールドも目指し、行政事務の効率、農林水産業の高度化、災害把握・対策等で、研究・教育成果の社会実装に係る試行を行う。
② 宇宙教育拠点化を目指す「肝付町」における活動支援・拡充
鹿児島県内で唯一の私立理系大学であり、今後、宇宙産業を支える次世代エンジニアの輩出を目指す第一工大と連携・協力することで、同じく宇宙産業に資する人材育成、輩出を目指してきた肝付町の宇宙教育活動の拡充を図る。
具体的には、学生によるロケット打上げ共同実験の運営支援、宇宙甲子園 に係る鹿児島県内における活動支援、町内における宇宙教育活動を行い、学生らの学びと教えを支援する。
連携が検討されている内容
▽情報データサイエンス(衛星データ)を活用した防災・地域課題の解決に向けた活動・試行
▽教育用ロケット共同実験場(岸良海岸)の運営支援
▽県内企業との共同研究に係る肝付町内での活動検討・施行〔官・民・学連携〕
▽学生の肝付町内での活動検討・試行〔燃焼試験、打上げ等〕支援
▽肝付町内の幼小中学校等への出前講座〔宇宙教室、宇宙分野以外〕
▽第一工科大学イベント、子ども航空教室などへの肝付町内小学生・中学生の参加
▽ドローン関連技術・情報提供(農家等へドローン操縦・農薬散布技術支援、ドローンで撮影した広範囲、高精度の画像情報解析結果を町、農家等へ提供し、地域振興に一助とする。更に、ドローンを活用した防災分野での協力も行う。
この日は、両者から協定の主旨説明があり、協定書署名。
学校法人都築教育学園第一工科大学の都築明寿香学長と、肝付町の永野和行町長。
そして立会人の大塚大輔副知事があいさつし、宇宙関連分野において相互交流を深め、宇宙関連での人材育成、宇宙関連技術の振興を推進、交流人口増加による地域振興を期待し、新たな一歩がスタートした。
この日の出席者は次の通り(敬称略)。
〈第一工科大学〉
学長 都築明寿香
副学長 山田猛矢
工学部長 満丸浩
航空工学部長 島藤力
航空工学科長 徳永正勝
学園本部事務局長 有吉泰三
〈肝付町〉
町長 永野和行
副町長 福元了
宇宙のまちづくり推進課長 東純也
〈鹿児島県〉
副知事 大塚大輔
商工労働水産部長 北村貴司
商工労働水産部新産業創出室長 栗野寛教