2025年06月06日 15時29分

《大隅点描 》

ツクシイバラの変異~深紅色、帯紅色、白色、大きさも変化

 ツクシイバラ(バラ科)は、前回紹介したが、大隅原産種は写真に見るように花が深紅色であり、花色の濃淡にも産地によって幅がある。

 花径は3㌢から5㌢、花1個の命は3日間で、開いた花は夕方に閉じて翌朝また咲く。

 開花の1日目は径3㌢の深紅色、2日目は帯紅色に変化し径4㌢、3日目は淡紅色のち白く退色して花弁は落下し種子へと発達する。

 花序は全体に紅色な繊毛が目立つほどに密生する。
 これに交じって葉軸と小葉裏側に、わずかに白毛が生えルーペ3倍で確認される。

 繊毛、白毛の有無はその陽だけで判断できない。また花色も同じである。

 大隅原産のツクシイバラの花は5月上旬から6月上旬まで見られる。

 「古里は西も東も茨の花」と江戸後期の俳人、一茶がノイバラの花を俳句で詠んでいる。
 そんなノイバラの変種ツクシイバラも古来から昭和40年代にかけて人里の原野、河川岸辺に広く分布していた。

 しかし昭和という文明開花ともいうべき目覚ましい高度経済産業発展は、私たちの従来の暮らし、生活様式を一変させる歴史的転換期に入っていた。

 結果的に人間の都合により自然との共存、共生関係が絶たれ、里山、原野の消滅により、馴染みのある多くの生物類が絶滅していった。
 そのツクシイバラも現状では生育地も限られ、個体も減少し絶滅へ向かっている。

 すでに野生での生育は不可能に近く、域外保全が必要であると感じている。
 究極は種を絶たないことにある。

 大隅の自然、歴史研究
 坂元二三夫

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