《おおすみ雑記 》
自給率を高めていくために一つの施策として
もちろん農家ではない…、ただ、田んぼを借りて無農薬での米作りにチャレンジ、共同で野菜を作ったり、種まきや収穫のお手伝い等はしてきた。
なので、本当の農家の大変さとかは知らないわけで、「生態学的に健全で、経済的にも成り立つ農法」などと無責任なことを言っているのでは…と思われていることと思う。
笑われるかもしれないが、米が永く続くという名前なので、勝手な思い込みなのか時より土が無性に恋しくなる時がある。ただ毎日は関われない…。
農というのもなのだが、この大隅半島の自然そのものに惹かれている。
この大隅半島の緑濃き照葉樹林帯の中に改めて身を置いたとき、それまでは、今よりもっと不規則で、心身ともにとてもバランスの悪い生活をしていて、そうした森に入るたびに、この身体の毒素のようなものが汗とともに流れ落ちていくような気がした…。同時に心も軽くなったような気がして…。
その自然とのかかわりを少しだけ…。
2003年当時、大隅の照葉樹林を世界遺産にする会で照葉樹林観察会が開催され取材。そのうち、調査や観察会等にも同行するようになった。
その頃、日本自然保護協会が宮崎県綾町の照葉樹プロジェクトに参加しており、大隅半島とも関りを持ってもらって、大隅照葉樹原生林の会としてシンポジウムを開くなど活動。2009年にNPO化して活動の輪を広げた。
日本自然保護協会とは、肝属山地南部の稲尾岳周辺の植生調査にもNPOとして参加し、肝付町川上地区の金弦の森にタブやスダジイの巨木が残っていると、その巨木ナンバリングも行った。
2011年末ごろから、その川上地区で同協会の「大隅照葉樹の森プロジェクト」「ふれあい調査」が始まり、アンケート、地域のキーパーソンへの聞き取り調査、実際に歩いて自然に触れる現地調査等を行い、これをマップ等に落とし込んでいく作業もお手伝い。
川上地区の自然や人に触れ、その豊かさに感動し、同地区で古民家探しや、きれいな水を使ってお米作りにチャレンジしてきた。
農家ではないので…笑い話も
農家ではないので、慣行農業のことはほぼ知らず、米や野菜作りは、紹介して下さった人や、周りの農家さんにいろいろ言われながら無農薬で、野菜は土づくりのために施肥を少し、蝶の幼虫との闘いが続いた。
笑い話を一つ。
川上地区のきれいな水でお米作りをしていた時、中山間地なのでイノシシが出る。いろいろ対策をしてみたが、アウトドア好きでソロキャンプなどしていたので、一晩田んぼの横にテントを張って見張ることにした。こんなことをするのは聞いたことがないと笑われた。
夜も長いので、テントの中で調子よく焼酎を飲みながら番をしていたら、そのまま寝てしまい、朝起きたら、稲がだいぶ倒れていた。
周辺の方々からさらに大笑いされ、行く度に1年ほど話題にされた。
こんなままごとみたいなことをしていて、農を語るのはおこがましいと思うが、考えているのは、農にもいろんなスタイルがあってもいいということ。
ハードルが高い事業内容か
これまで伝えてきたように、近代農業というものにあまりにも固執し過ぎではないか、行政や農協などもそうだし、国は中山間地農業ルネッサンス推進事業を進めていて、農山漁村振興交付金で、地域別農業振興計画に基づいて収益力向上や販売力強化等に関する取り組み、複数の集落の機能を補完する農村RMOの形成、デジタル技術の導入・定着に対する支援を実施する…としている。
輸出奨励や大規模農業などの施策の他に、中山間地農業についても、だいぶ前からその対策が言われていて、新たな推進事業が数年ごとに発表されている。
ただ、それ以前の事業結果を検証することなく、ただ言葉を少し変えたり、デジタル技術の導入など新しい言葉で飾られたりして、それが繰り返されているような気がする。
それでいて中山間地農業ルネッサンス事業の令和6年度予算額は、411億1千4百万円という。
感じるのは、水がきれいで周辺に腐葉土もふんだんにあったりする環境で、果たして今の農法がその地域にあった農法なのか、その地域で出来る農作物に付加価値がついて、ブランド化される農法なのかというと、何か違うやり方があるような気がする。
複数の集落の機能を補完する農村RMOの形成、デジタル技術の導入とかもだが、そうした地域では高齢化率が高く、現時点ではハードルが高い。
地域を全体的、構造的に変えていくところに
中山間地農業に対する予算については、水がきれいで周辺に腐葉土もあったりする地域で、その地域に本当に合った農法を前提にして、結果が少しでも目に見えるような、例えば自然にやさしい農業や食を求める若い世代の移住、その人たちが住む住居に助成したり、激増する空き家や遊休農地対策、後継者不足対策など、ルネッサンスと言うなら、その地域を全体的、構造的に変えていくようなところに、つけていくべきだとも思う。
そうしたスタイルの農法を中山間地域で、これまでの慣行農法、輸出奨励や大規模農業などとは棲み分けをして違う農法で考えていく。
そうするとその地域の農法やスタイルは、おのずと決まってきて、これらが我が国の食の自給率を上げていく一つの大きなファクターとなっていくと思う。
というより逆に、各々の中山間地域周辺に直売所を建設するなど考え、自給率を高めていくために国、行政が一つの施策としてすすめていく。
大隅半島の中では、そうしたことが出来る地域が、結構あると思う。地域にとってもだが、この国の自給率を上げるためにも急務なことだと考える。(米永20241020)