《おおすみ雑記 》
地域の違いを見据え、そのレベルごとの見直しを
今年1月に「人口戦略会議」が提言、「消滅可能性」があるとされる全国744自治体という分析が盛られた「人口ビジョン2100」。
その中では、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」によると、このままでは2100年には6300万人(中位推計)と、総人口は半減するとされている。
写真=「人口ビジョン2100」から
先週、この欄で記したように、それがすべてではないが、地方に若者が住みにくい環境を、この国の施策自体が作り上げているのでは…と、地方に住んで感じ書いている。
この人口ビジョン2100の一部だが内容を抜粋してみたい。
100年近く前の1930年の総人口が同程度でしたので、単に昔に戻るかのようなイメージを持つかも知れませんが、それは事態の深刻さを過小評価するものです。
当時は、高齢化率(総人口の中で65歳以上の高齢者が占める割合)が 4・8%の若々しい国でしたが、2100年の日本は高齢化率が40%の「年老いた国」。
この間、政府が取り組んできた少子化対策は、待機児童の解消や不妊治療の保険適用など一定の効果をあげた施策はあるものの、概して単発的・対症療法的だったと言わざるを得ません。
少子化対策予算(家族関係支出)が他のOECD諸国に比べると低水準にあることを問題視、「2020年頃を目途に早期の倍増を目指す」ことを提言しました。
安定的で成長力のある「8000 万人国家」を目指す
その後、政府は予算を増加させてきたものの、家族関係支出対GDP比(2019年度)は1・7%で、スウェーデン3・4%の 2分の1にとどまっています。
2023年、岸田政権が「次元の異なる少子化対策」として「2030年代初頭までに、国の予算の倍増を目指す」方針を表明しました。この方針は大いに評価できますが、2014年に提言された時期からは10年遅れています。
最近では、我が国同様に低出生率であったドイツが、若者世代の仕事と子育ての両立を可能とするような抜本的な働き方改革に取り組み、それもあって 2011年に1・36だった出生率は5年間で1・60(2016年)にまで急上昇。
これまでの対応に欠けていたことは、政府も民間も、人口減少の要因や対策について英知を結集して調査分析を行わず、その深刻な影響と予防の重要性について、国民へ十分な情報共有を図ってこなかった。
人口減少の問題は、一部の政府関係者や有識者といった限られた範囲での論議にとどまっていたきらいがある。
若者、特に育児負担が集中している女性の意識や実態を重視し、政策に反映させるという姿勢が十分ではなかった。
今を生きる「現世代」には、社会や地域をしっかりと「将来世代」に継承していくという点で、後世に対する重い責任があることを正面から問いかけてこなかったのではないか。
こうした基本的課題を念頭に置いた上で、安定的で、成長力のある「8000 万人国家」を目指す。
国民一人ひとりにとって豊かで幸福度が世界最高水準である社会を目指し、総合的・長期的な戦略として、本提言は「定常化戦略」と「強靭化戦略」の二つを示し、今こそ総合的、長期的な視点から議論を行い、国民全体で意識を共有し、官民あげて取り組むための「国家ビジョン」が、最も必要なのではないでしょうか。
として、三つの基本的課題、これから取り組むべき「人口戦略」、どのように人口戦略を進めていくかなどが、30ページを超え記されている。
国と地方の役割分担を見直し、地方への権限移譲を加速化
多くの課題があるのが分かっていながら、指摘がされるだけで、現実的、具体的な施策でない単発的・対症療法的なものが繰り返されてきた結果により今がある。
このままでは2100年には6300万人と、総人口は半減するところを、これら基本的課題を念頭に置いた上で、安定的で、成長力のある「8000万人国家」を目指すというビジョン。
そこでは、三つの基本的課題、「国民の意識の共有」「若者、特に女性の最重視」「世代間の継承・連帯と「共同養育社会」づくり」を挙げている。
そして二つの戦略による「未来選択社会」の実現として「定常化戦略」と「強靭化戦略」が必要としているが、2000年に廃止された人口問題審議会など、総合的、長期的な「国家ビジョン」を議論する場が存在しない、という問題を指摘しながら、「定常化戦略」と「強靭化戦略」という二つの戦略についてが詳しく記されている。
その中でも、戦略の“背骨”は「人への投資」 とし、教育費用の個人負担軽減や教育の質的向上、教育分野においても新たなイノベーションで、「中央集権的、画一的な教育のあり方を変えていくことです。そのため、教育分野の規制改革や地方分権を進めていくことが重要」としている。
また、「国と地方の役割分担を見直し、保育や教育分野等における義務づけ・枠づけの規制緩和や地方への権限移譲を加速化することが必要」とも。
このほか、「永定住外国人政策」に関しても多くのページが割かれているが、教育に関しての「中央集権的、画一的な教育のあり方を変えていくこと
」「国と地方の役割分担を見直し」ということに注目してみたい。
もっと制度的、施策的に突っ込んで議論を
今、各自治体も人口減少に頭を悩ませ、その対策を練っている。
鹿屋市では、『未来につながる健康都市 かのや』」を、まちづくりの将来像として定めるとともに、「2060年に9万人程度の人口を維持する」ことを人口の将来目標に掲げ、人口減少を抑制するとともに、人口減少社会においても地域の生活機能を維持することを目的に「鹿屋市人口減少対策ビジョン」を策定、それぞれの分野でプロジェクトを掲げている。
思うのは、「国と地方の役割分担を見直し」ということの中でも、東京を中心とした関東圏や名古屋、大阪など大都市圏の場合。都道府県庁所在地など地方自治の中心都市の場合。鹿屋市などの地方の中核市の場合。
そして大隅半島のように、大きく人口が減っていく中で、一極化が進んでいる鹿屋市は目標が他に比べ高く持てていると思うが、その他の自治体のように本当に死活問題となっている地域。
政策の中で、その違いを見据えて、そのレベルごとに見直していかないと、大都市圏と消滅自治体と同じような議論、論法では、どうしても大隅半島の多くの自治体のように、そこからあぶれてしまう。
そこたをもっと施策的に突っ込んで議論し、制度的なものまで押し上げていく。
少し長くなってしまったので、続きは次回で。(米永20240513)