2024年08月09日 07時34分

《大隅点描 》

エノキを乱舞する玉虫~7月~8月交尾期 美しさ競う場に

 甲虫類の玉虫(タマムシ科)は、体長3センチから4センチ。

 羽は金属光沢があり、光線によって緑、赤、黒、金色に見え玉虫色といわれ、その美しさは古代から知られ、また夏や海昆虫採集の花形ともなっている。

 そのタマムシの飛翔の姿は、同じ甲虫類のカブトムシ、クワガタ、カナブンと同じ立姿で、外羽を8の字に広げた状態で内羽でブーンという羽搏音で浮上し飛翔する。

 飛翔するスピードは弱く、網で簡単に採取できそうだが、玉虫は高さのあるエノキ(アサ科)の天辺を乱舞し、エノキの葉を好物としているため、採取を困難にしている。

 7月から8月が交尾期でもあり乱舞は美しさを競う場になっていると思われる。

 一方で玉虫は、すべてのエノキに生息する訳でもない。やはり飛翔に適した高低差のある生息環境に適した地形を好み、河川に近いところを生息エリアにしている。

 写真は鹿児島県鹿屋市高須町の高須川に近い道路沿いで撮影したもので、1本のエノキに玉虫約20尾が生息しており、ほかのエノキから飛翔してくるのも確認された。

 一方で玉虫は、大隅半島の河川沿いに広く分布する南限のハルニレ(ニレ科)の樹液に集まっているのを確認しており、研究の余地を残している。

 幼虫は生息エリアに生えていたカシ類などの枯木に食い進みトンネルを掘って生活する。
 地域の歴史に詳しい高須町内会長の話ではエノキの群生地あったことも分かり、古くから玉虫の生息環境が保たれていたことが分かってきた。

 秋に熟すエノキの赤い実はジャムのように甘く、昔の子らに人気でエノキを方名で「エノッ」と親しまれていた。

 大隅の自然、歴史研究
 坂元二三夫

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