2024年10月06日 11時29分

《おおすみ雑記 》

農業にもSDGsを~パーマカルチャー

 手元に「パーマカルチャー」~農的暮らしの永久デザイン~という、1993年初版の本がある。

 「パーマカルチャーというのは、人間にとっての恒久的持続可能な環境をつくり出すためのデザイン体系のことである。
 パーマカルャーという語そのものは、パーマネント(permanent・永久の)と、アグリカルチャー(agriculture・農業)をつづめたものであるが、同時にパーマネントとカルチャー(文化)の縮約形でもある。
 文化というものは、永続可能な農業と倫理的な土地利用という基盤なしには長くは続きえないものだからである。」

…などが、その本のカバーレターとして書いてある。

 「永続可能な農業と倫理的な土地利用という基盤」を、文化という言葉でくくってある。
 ビル・モリソン/レニー・ミア・スレイ著の日本語版で、手にしたのはほぼ30年前。

 前回までこの欄で書いてきたのは、この文化として捉える農業と、資本主義的な農業がそれぞれあるとすれば、今は資本主義的な農業が、慣行農業として主流となっており、オーガニックとか有機農業とか言うと、眉をひそめる人も多い。

 30年ほど前にも、この本を手にしながら農家でもないのに「永続可能な農業」ということを真剣に語っていたときがあった。それは、10年ほど鹿屋を離れ戻ってきてから、この地域の自然の豊かさを感じ、この身をそうしたことが感じられる環境において生活をしたいと漠然と思っていたからだ。

 たぶん、周りからすると変なヤツ…と思われていたのだろう。ショットバーに行ってカクテルとか飲みながら深夜までそういう話をしていたからだ。

慣行農業は普遍的か、視点を少し動かしてみる

 誤解を恐れず言えば、化学肥料や農薬を使用して高収量を目指す今の慣行農業は、「永続不可能な農業」と言えるのではないか…。

 逆に、オーガニックとか有機農業という言葉で眉をひそめるのでなく、慣行農業という今は普遍的とされている農法に対して、最近、流行語のように「SDGs」ということを声高に唱えるのであれば、そこにも手を深く突っ込んでみる必要がある。
 その手にべたっとついた農薬や化学肥料に対しても考えてみて、人間にとって、あるいは土中の微生物や田んぼにいたゲンゴロウなどの昆虫など、SDGsな環境と言えるのか、眉をひそめるというよりも、体の奥底からの声が漏れ聞こえてくるような気がする。

 文化という考え方では飯は食えない…と反論されるのは必至だし、頭でっかちと言われそうだが、この本の序文には次の要旨が記されている。
 
 パーマカルチャーの基盤をなすのは、自然のシステムの観察と、昔からの農業のやり方の中に含まれている智恵、そして現代の科学的・技術的知識であり、生態学的に健全で、経済的にも成り立つ一つのシステムをつくり出すことであり、それぞれの要素にとっての必要がそこで満たされると同時に、搾取したり汚染したりすることのない仕組み。したがって長期にわたって持続しうるシステムである。

生態学的に健全で、経済的にも成り立つ農法

 前々回書いたが、ここ2~300年で進められてきた「化学的農業で産業の真の基礎を築き完璧な農業」という企業的農業。
 そして「1万年以上続いた人や自然に優しい農業、食」を求める人たち。

 今は、高収量のほうに目がいき、科学的・技術的知識が過度に大事にされ、産業的な考えで消費に目を向けた生産だが、毎日食材を口にする私たちの身体のための食べる側や、地球環境の視点からの農業をもっと併せ持って考えてもいいのかと思う。

 パーマカルチャーでいう生態学的に健全で、経済的にも成り立つ一つのシステム。
 それは多年生の樹木や濯木や草本(野菜や草)、菌類、根系などに基礎を置いた多種作物農法だとしている。
 今、多年生の樹木や濯木まで及ばないにしても、年間を通して多種作物を収穫しようとチャレンジしている農家も、試行錯誤ながら見掛けるようになってきている。

 生態学的に健全で、経済的にも成り立つ農法。自治体がそこに気付き、手法は少し違うかもしれないが、地域の中で子どもたちのことを考えた給食で具体的に実践するようなところも増えており、自治体だけでなく、オーガニックだけでなければ生き残れないというJAも出てきているようだ。

農業の二刀流も考えてみる

 要は、西洋化されたというと語弊があるかもしれないが、何もかも合理的で産業化された農業という一本槍でなく、こっちが正であっちが誤とかいう考えでなく、二刀流も考えてみる。そこに一歩踏み出せるかどうかだと思う。
 産業化された農業をさらに、ICT農業で新しいスタイルの農業を…というかもしれないが、ベースが産業的、資本主義的農業のままだと、返って私たちの身体や地球そのものに負荷を掛け続ける結果となってしまうような気がしてならない。

 それらに対する医療的、災害対策費用などの経済的反動は、かえって大きくなり財政全体から考えてみると負の側面が強くなりそうだし、SDGsでは無いと思う。(米永20241006)

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