2025年03月30日 11時10分
《大隅点描 》
山桜花咲く~一木一木異なり、自然の中で交雑
ヤマザクラが咲いた。
人の手で改良され植えられた品種のサクラには目に止めず、ヤマザクラの開花はまだかいなと、あちらこちらへ見て廻った。
江戸中期の国学者、本居宣長は「敷島の大和心を人間はば朝日匂ふ山ざくら花」と歌っている。
やはり人間はば(主観)自然に咲くヤマザクラは美しい。
ヤマザクラは宮城県以西から九州の山野に生え、歴史的には日本書紀に登場している。その代表的名勝地として奈良県吉野山のヤマザクラが有名である。
下千本、中千本、上千本、奥千本と一つの山が染まるほどで、その大半がヤマザクラである。


かのソメイヨシノは江戸後期に改良された品種として明治に入って急速に普及し、桜人気は品種改良を加速させ、全国各地に広まった。
これ以前の桜の花見の多くは、このヤマザクラであった。
日本固有種であり国花でもある。ヤマザクラの美しさはなんといっても変化に富む特色にある。
ヤマザクラは花が開くころに若芽が伸びている。
その若芽は気によって緑色や黄緑色、褐色、紅赤色と異なり、花は淡紅色、白色から濃い紅色のものまであり、中には若芽に先駆けて白花が先行する木もあり、同じヤマザクラでありながら一木一木異なり、自然の中で交雑している。
その若芽や花を一つひとつルーペで観察するのも楽しみである。
大隅の自然、歴史研究
坂本二三夫