2024年08月20日 07時41分

《教育・社会 》

新しい人の流れで地域活性化を~スクラブに全国から学生

曽於市財部港跡地に整備された南九州畜産獣医学拠点(SKLV・スクラブ)

 畜産が盛んな曽於市の財部港跡地に令和6年4月に開設された獣医師を養成する施設「南九州畜産獣医学拠点(SKLV・スクラブ)」で、8月19日から全国の大学から学生の受け入れが始まった。

 今回集まった10人の学生がオリエンテーションを受け、4泊5日で曽於市での生活が始まり、同市では全国からの受け入れにより「新しい人の流れを創り出し、地域活性化を図る」というスクラブの目的達成に向け、大きな一歩を踏み出すこととなる…と期待が掛けられている。

写真=自己紹介する全国から集まった学生

 南九州畜産獣医学拠点は、曽於市と鹿児島大学が連携・協力して牛、豚、馬、鶏の臨床実習の場やアニマルウェルフェアなど獣医師になるための学生のために整備されたもので、牛や馬は民間事業者が管理して官民あげて畜産業を担う人材の育成などを行う。

 4月開校からこれまでは鹿児島大学の学生が学んでいたが、19日から全国から大学生を受け入れることになり、神奈川の麻布大学、鳥取大学、岡山理科大学、山口大学、鹿児島大学など5つの大学から獣医師を目指す10人の学生が実習に訪れた。

 これは、鹿児島大学の共同獣医学部付属南九州畜産獣医学教育研究センターが、夏休みや冬休みを中心にほぼ毎週、学生を受け入れ、いま不足している獣医師や産業動物のケアに対する総合的な施設として、令和6年度は全国の学生約100人を受け入れる予定で、将来的には500人を受け入れていくという。

写真=オリエンテーションの様子

 現在同施設では、牛189頭、鶏5000羽、馬15頭が飼育されており、今回、総合コースと馬専修コースで学ぶ学生が集まったもので、この日、学生らの自己紹介、施設や宿泊についての説明などが行われた。

 総合コースでは豚の体温検査、繁殖検診、豚の飼養管理、疾病などの講義があり、翌日から馬学講義、牛の臨床検査、一般治療と治療法、養鶏実習(AI検査)、日本軽種馬協会で施設見学と概要説明、農場消毒など防疫、衛生の講義、実習が行われる。

 馬専修コースでは、馬実習、外貨疾患講義、画像検査、繁殖講義などが行われ、最後は両コースで総合ディスカッションが行われる。

 鳥取大学6年の池上綾菜さんは、「馬について4泊5日といった長い期間で集中して学べる機会は非常に少ないので、大学生のうちに機会をいただけるのはありがたい。就職はまちの動物病院に内定していますが、馬も好きで犬猫にも通じ、セカンドキャリアとして学びたい」

 麻布大学2年の戸松達哉さんは、「大学2年の必修で実習を受けなければならず、全国のリストの中から牛・馬・鶏・豚をオールマイティに学べる実習先がなかなかなくここを選びました。座学もあって、また動物とふれあいながら学び、より視野を広げていきたい」などそれぞれ話していた。

学生時に牛・馬・豚・鶏の実習をスクラブで

 鹿児島大学共同獣医学部教授、南九州畜産獣医学教育研究センターの帆保誠二センター長は、「大学の実習は、産業動物として各大学はなかなかできないというのが現状で、特に牛はそれなりにやられている大学はありますが、馬、豚、鶏はほとんどできてなく、こうして全国の学生に教育できるのは、我々としては非常にうれしい。

 学ぶ機会というのは非常に大切で、大学を卒業して産業動物医になる学生は少ない、それは学生の時に学ぶ機会がなかったということもあります。このスクラブで馬、牛、鶏、そして曽於高校にお願いして豚の実習ができるので、ここで学んだことを学生生活の中で生かしていただければ」など話していた。

 学生には、買い物や観光に電動アシスト付き自転車が貸与され、施設内を無料で乗ることのできる3輪モビリティの利用、また、2人乗り電気自動車のカーシェアもあり遠乗りや観光にも利用でき、地域との交流なども期待されている。

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