2025年01月24日 15時05分

《大隅点描 》

県内初確認、アサダの発見~神川の浸食谷

 落葉広葉樹のアサダ(カバノキ科アサダ属)は、北アメリカに2種、小アジアと南ヨーロッパに1種、中国に4種、日本に1種と小さな属であるという。

 日本では北海道から九州の冷温帯に自生、山地のやや湿った場所にやや稀に、北日本に多く、特に北海道に大木が多いとされる。

 秋田県の中新世(約1800年から1500万年前)からカバノキ科の化石も発見され、化石の葉の特徴から、アサダであることが特定されている。

 このアサダは、霧島山、栗野から報告されているが標本はなく、戦後は誰も採集していないとされ、すでに絶滅したとされている。

 そんな中にあって筆者は1月17日、コケ類調査のため鹿児島県肝属郡錦江町の神川の浸食谷に入っていた。
 神川渓谷は阿多カルデラ期限(約10万年前)の大火砕流によって生成された溶結凝灰岩原に位置する浸食谷河川である。

 すでに落葉を終えているはずの2本の気が、まだ紅葉したままの姿かたちを発見した。

 幹肌、葉の特徴からカバノキ科であるが、見慣れたシデ属でもなく不思議に思い写真撮影と標本を持ち帰る分類の確認を行った。

 結果は前文のアサダの大発見に至った。
 次の18日、19日にも現地調査を行い6本のアサダ一個体群を確認した。

 この内大きいものは高さ約25メートル、直径40センチもある巨木で、中新世の化石にもなったアサダが生きた標本として目前に現れたのだから半信半疑状態であった。

 本来ならばアサダは山地の冷暖性植物であるので、本地の暖温帯地に分布育成するはずもないが、温帯地の伴性種種(群落の優良種に伴って育成する種)として主要な高木で分布しやすいアサダの持つ性質上、湿地を帯びた本地の浸食谷河川に生命を宿したと判断される。

 参考例とするならば、樹木は倒木すると、のちに枯死するが、写真に見るようにアサダは倒木しても幹の途中から新しい新芽を吹いて根を下ろし、倒木更新による再生が可能になることが一個体群を見て推察された。

 この神川浸食谷河川にアサダがどの適度の分布を示すかなどの調査も行う必要があるが、県下でも人の出入りを不可能にするほどの危険な浸食谷であることから、現状では遠巻きな調査シカできないように思える。

 アサダは東日本では建材として優良種であるが、本地のアサダは本数が限られていることから、春の新緑、秋の黄葉として目の保養を高めそうである。

 大隅の自然、歴史研究
 坂元二三夫

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