《伝統 》
神事中に神社を叩き壊し神様目覚めさせる~根占祇園祭
南大隅町根占の祇園宮で令和6年7月27日、炎天下の中で男だけの祭り「祇園祭」が川北地区一統会主催で行われた。
祇園宮は男の神様で、対岸の津柱神社は女性の神で、七夕の日に、年に一回会うという祭り。
南大隅町根占港は鶴の港で、錦江湾を隔てた指宿市山川港は亀の港と呼ばれる。そのためか、根占の港の周囲には鶴の姓が多い。
午後11時50分に神事が始まる。神輿担ぎの若者が手や足を使って神社の壁を叩き壊す。叩き壊さないと祭りは始まらない。若者は「祇園祭が始まるぞ」と祇園宮の神様を眠りから目覚めさせるために行う。
板壁を壊して神事が終わってから、神殿から神輿を出す。壁を壊すのも祭りだが、 大工さんが祭り終了後に板壁を張り直す修理費用が毎年かさむため、最近では板壁の厚みを厚くして崩しにくくし、神社関係者はあまり壊さないように頼んでいる。
神社から出された神輿は水できれいに洗い清める。担ぎ手が荒くて神輿が大きく揺れるため、ロープで神輿を台座にしっかりと固定した。
神輿は、大きな傘と鉾を先頭にして地区の各家々を神幸して巡り、夏の暑い時期に疫病が入ってこないよう清めるという。
川北地区は漁師と船乗りが多く、祭りに神輿を担ぐために帰って来ていた。しかし、これらの人々はほとんどいなくなり、他地区から応援をもらっているが、それでも年々少なくなっている。かつての担ぎ手は漁師などで気性が激しく、勢いよく神輿を担いでいたが、今年の神輿はおとなしい。
神輿は祇園宮を出発し、国道を北上して家々を清め、次に旧道の路地を巡ってさらに各家々を清める。各家庭では門口に御神酒を供えて一行を迎える。
神輿が家の前に着くと、神輿は若者に担がれたまま門口から家に向かう。御神酒を神輿に振りかけ、「ソーラエーヨーイヤナー、〇〇さんから御神酒をちょうだい・・・」と古老が歌うと、担ぎ手が「ヤーヨーイトナー」と囃す。
随所に水が準備され、担ぎ手に振りかける。若者は家に若い女性がいると、頭から水を掛けてびしょ濡れにする。
神輿の前に赤ちゃんや小さな子どもを乗せ、健康で健やかに成長するよう祈願する。
港公園がお旅所で休憩する。かつては河口を神輿が泳いで渡り、対岸の津柱神社にお参りしたが、近年は神官と役員だけが神社まで車で行き、神事する。
八坂神社は男神で、津柱神社は女神。年に一回八坂神社の神が、津柱神社の女神に逢いに行く祭りと伝承されている。
神輿は地区の家々を夕方の5時頃まで巡った。