《政経・産業 》
うったくれ たたかんか~曽於市末吉深川の鬼追い祭り
曽於市末吉深川の熊野神社で正月7日夜、奇習「鬼追い祭り」が行われ、たくさんの観衆が鬼から追いかけられて叩かれた。
鬼追いの鬼に叩かれた人は無病息災で、健康で1年間過ごせると伝えられる。
鬼追いは同地区の「光明寺」の正月行事だったが、廃仏毀釈で廃寺になり、途絶えていた。すると悪疫が付近に流行したため、地区の青年が熊野神社で再開したと伝えられる。
ここの鬼は招福除災の善鬼で、悪鬼のイメージはなく悪疫を退散させる。
午後7時、境内横の森で鬼神太鼓の奉納が始まった。杉の大木の森に幻想的な照明が当てられ、さらにかがり火が雰囲気を添えた。
森の中での太鼓演奏があり、後半では面をかぶった鬼神が登場して太鼓を叩いた。太鼓の音に合わせて地元の瀬戸口留美子さんが篠笛も披露した。
午後8時すぎ、神社周囲の照明が消された。
鐘が連打され、「うったくれ、たたかんか・・・」と鹿児島弁の放送と共に、鬼が鬼堂から飛び出すと、鐘太鼓が激しく鳴り響く中、3頭の鬼は次々に参道の階段を駆け下り、神社前の広場で暴れまわる。
鬼がまとっている御幣をちぎって持ち帰ると1年健康であると言われるが、鬼から叩かれるためなかなかだ。
鬼は男鬼・女鬼・子鬼の3頭で、年男の25歳男性がふんする。鬼の左右にツケ(鬼使い)が付き、鬼は御幣をなびかせ縄を編んで作った「鬼の手」と樫の棒で人々を叩いて暴れた。
鬼は焼酎を飲んで気勢を上げ、観衆は鬼の御幣を狙って駆け寄るが、御幣を取られまいと鬼は鬼の手で観衆を叩きながら暴れた。
鬼は御幣を取られると元気がなくなると言われ、取られないように暴れる。
今年の鬼は暴れたが、ツケやヘルメットを被った警護が鬼以上に暴れて叩いいてた。
昨年は鬼から叩かれて指を骨折した人がいた。いつもは救急車が来るが、今年は幸いにも来なかった。
約30分間鬼は暴れ、参道を駆け上がって鬼堂に帰った。
鬼追いが終わると煎り豆が配られる。この豆が芽吹きしない限り、災いは起こらないと地区では伝承されている。豆は煎ってあり、芽吹くことはない。
昭和53年から放送を続けている吉永辰美さん(82)は「鬼が来たときは賑わうが、いなくなるとシーンとしているので退屈しないように何かやってみようと、鹿児島弁で打ったくれ、叩けなどと放送を始めた。」と語った。
会場入口近くの公民館では、ソバが無料で振る舞われた。