2024年07月19日 17時07分

《おおすみ雑記 》

改めて空白の日本古代史を大隅半島から考察してみる

 大隅半島の古代の歴史を研究する中で、半島に点在する古墳や吾平山上陵などについていつも伝えていることは、いろいろな本を読んでみる中で、東京や県外の人たち目線からの考察、あるいは大隅半島に足を踏み入れたことのないと思われるような記述で、南九州の古代の歴史を論破されていること。

 もっと言えば古代の歴史について、南九州にはほとんど触れていない本も多く、とても残念な思いをしている。

 そして最近考えているのは、空白の古代、空白の世紀と言われる4世紀から5世紀について、大隅半島でも、それなりの遺物が発見されているのに、それが日の目を見ていない…というか、無視されている感じで寂しい。

 特に、肝付町にある塚崎古墳は、ここ最近まで5世紀のものとされていたが、小型ツボと土器を置く台などからして4世紀のものと分かってきて、4世紀は畿内でも古墳を造り始めた時期で古墳時代の歴史観が変わった。

 また、古事記・日本書紀では、古墳時代の天皇の記述があるが、中国南朝の宋帝国(劉宋)の正史『宋書』に登場する倭国の5代の王、讃・珍・済・興・武が記されている。

 この中でも済=允恭天皇、興=安康天皇、武=雄略天皇は、異論が無いと言われており、この第21代雄略天皇については、埼玉の稲荷山古墳出土鉄剣、熊本の江田船山古墳からの銀象嵌銘大刀にはワカタケル大王(雄略天皇)の銘文が刻まれ、考古学的にも実在が実証されている。

 また、近習として仕えていた隼人が、雄略天皇の死に際し、七日間号泣し自害した話が伝えられている。

 鉄剣については、吾平町の「中尾地下式横穴墓群」から出土した象嵌装大刀がある。

写真=吾平の中尾地下式横穴墓から出土の象嵌装太刀や剣など

 さらに鉄剣については、ここ最近、2023年に奈良県富雄丸山古墳から国内最大となる長さ237センチの蛇行剣が出土して話題になっているが、鹿屋市でもそれだけ大きくはないが蛇行剣は出土している。

 鹿屋市西祓川町の薬師堂の古墳・祓川地下式横穴墓群では、周辺で30基を越える地下式横穴墓を確認。

 ここでは、昭和25年に農道開削に伴って、地下式横穴墓から県指定文化財「短甲・衝角付冑」が発見され、昭和41年3月に県の有形文化財に指定されている。

 また、西祓川新線建設に伴い平成17年度に調査を実施し、地下式横穴墓からは、鉄剣や鉄鏃が出土し、その中で蛇行剣が発見され、加えて祭祀を行ったと考えられる場所が確認されるなど貴重な発見となっている。

 蛇行剣は、古墳時代の日本の鉄剣の一つ。文字通り剣身が蛇のように曲がりうねっている(蛇が進行しているさまの如く)形状をしているため、こう名づけられている。

 西日本を中心に出土している鉄剣で、その形状と出土数から実用武器ではなく、儀礼用の鉄剣と考えられている。

 古墳や地下式横穴墓群などから出土しており、南九州の太平洋側(宮崎県・鹿児島県)地方発祥の鉄剣と考えられているが、5世紀初頭には近畿圏にも広がりをみせている。

 古墳時代における日本独自の形状の鉄剣・鉾という意味から、考古学上、重要な資料となっている。

写真=祓川で発見された蛇行剣など

写真=祓川で発見された短甲など

だからこそ古墳群が存在し、神代三山稜が2つも

 また、短甲・衝角付冑については、雄略天皇が、短甲等の型取りをし大量生産を行って、全国を支配していく手掛かりにし、地方豪族に配っていた時代ともいわれており、この大隅半島でも、志布志市の原田古墳群3号地下式横穴墓からも出土しており、県指定文化財となっている。

 つまり、古墳時代の空白の世紀については、この大隅半島にも何もなかった、空白だったと考えられ、様々な書物にも、この大隅半島が無視され続けているが、全国で話題になっている象嵌装太刀や蛇行剣、短甲・衝角付冑も出土しており、ただ、それがうまく発信されていないだけで、空白の世紀の一部を埋めるものは存在する。

 もっと言えば、今から約2000年前弥生時代、鹿屋市の王子遺跡からは、やりがんななどの鉄製品や鉄滓(てっさい・鉄を製錬する際に出る不純物、スラグ)が発見されており、古墳時代以前から鉄に関しての技術を持っていたとも考えられ、むしろ古代については、この大隅半島が先進的な場所だったと言える。

 だからこそ古墳群が存在し、神代三山稜の2つがあり(高屋山上陵は明治7年まで国見山頂)、多くの遺物も残されている。

 この空白の世紀を埋める歴史的作業を、この大隅半島でも進めていくべきと考えている。

 先日は某会で、大隅半島は日本の歴史の発祥の地だと言われているのに…という話だったので、本紙で50回以上の連載を2度も書き続けてきた…と反論すると、もっとyou tubeとかでも発信して…とも言われた。

 おっしゃる通りだが、今のところ大隅の古代の歴史について本を書くのでと、数年前から話をしていて、ベースになるものは出来ているが、その先が進んでいないので、またその先の動画まで行き着いていない…。歩みを早めたい。(米永20240719)

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