《伝統 》
1本が的の中心の竹に当たる「籠もり矢」~高山流鏑馬
900年以上の伝統を誇る肝付町新富の四十九所神社の流鏑馬(やぶさめ)が、令和7年10月19日、同神社前の宮之馬場で開催された。
特殊神事の鏑流馬奉納があり、神社周辺ではやぶさめ祭も実施された。
流鏑馬は四十九所神社前にある宮之馬場で、若武者が疾走する馬上から60㎝角の3本の的をめがけて次々に鏑矢を9本放った。1本が命中し、籠もり矢だった。

毎年10月19日に行われていたが、近年は10月第3日曜日に開催され、今年は10月19日に開催となった。
射手は毎年変わり、今年の射手は同町新富の高山中学校2年生の「近藤颯海真(こんどうそうし)」さん。
近藤颯海真さんは、同町新富に父の雅彦さんと母の由美さんと、兄弟3人の5人家族。颯海真さんは三男で、長男の祐生瑞さん(23)は2016年に流鏑馬の射手を務めた。颯海真さんは兄の姿を見て、いつかは私も射手になりたいと願っおり、念願が叶った。

一ヶ月前、流鏑馬練習安全祈願祭が旧大隅線跡地で、射手の家族と流鏑馬関係者が集まって行われた。
馬場と道具などの清め祓いがあり、大田四十九所神社宮司が安全祈願の祝詞奏上し、射手などが玉串奉奠して、安全を祈願した。
練習は順調に進み16日に、四十九所神社の馬場で最後の練習を終えた。
10月17日は神社から東串良町の柏原海岸まで馬上に跨がり徒歩で神幸し、海水で身を清める「潮かけ」の儀式が行われた。
本番前の深夜、高山川でさらに身を清めて流鏑馬に臨んだ。
19日は役場から流鏑馬パレードが出発し、市街地をパレードすると神社に帰り、四十九所神社で「弓受けの儀」があった。神殿に保存されている特別の弓を授かり、その時に少年は「神」になった。
少年は鮮やかな紫の狩衣姿で、頭上には綾藺笠(あやいがさ)を戴き、午後2時過ぎに鏑流馬奉納する四十九所神社前の宮の馬場に、神馬に跨がって姿を現した。
今年の馬は北海道からこのほど導入された「白流(はくりゅう)」号。
白流号に跨がった近藤颯海真射手は、神社前広場を右へ3回廻り、花吹雪を舞い散らしながら、約330メートルの馬場を疾走し、矢は放さない試しの「空走り」を行った。



いよいよ本番の第1走では再び花吹雪が舞い、さらに軍扇が投げて疾走した。
最初の1番的に放つ白羽の矢は見事に的中し、籠もり矢だった。籠もり矢は鏑矢が的の中央にある竹を挟んで命中した矢で縁起が良く、神社の奥に永久保存される。
今年は9本中1本が命中した。
会場周辺では「流鏑馬祭」と農業祭が開催され、道路にはたくさんの出店が出てにぎわった。
岩手県大船渡市から届いた昨日水揚げされた新鮮な「さんま」は、公認サンマ焼き師が目の前で炭火焼きした。焼きサンマは1匹400円で販売され、収益は東日本大震災の復興支援にあてられる。
午後3時から祭りの締めくくりとしてヤッサンおどりがあり、市街地の道路を文化協会などの踊り連が踊り賑わった。

