2024年09月18日 17時46分

《雑草 》

動き出すのか憲法9条改正~自衛隊明記、国防軍明記

 今、自民党総裁選の中、9候補で様々な議論がなされているが、憲法改正も争点とされている。

 閣議決定も含めここまで法的に規定され、憲法解釈としてもその存在や活動が認められるようになった自衛隊。
 なので憲法にも明記をという。

 石破茂氏は、「憲法改正に関し、戦力不保持をうたった9条2項を削除した上で、現在の自衛隊を『国防軍』に改め憲法に明記すべき」としている。

 小泉進次郎氏は、「一度も国民に問う機会を持たないことを続けるのは良くない。憲法に自衛隊を書くのを国民が本当に駄目だと言うか。たとえ否決される可能性があっても(国民投票の)機会を持ちたい」などとしている。

 岸田文雄首相は、公言してきた任期中の改憲を実現できなかったが、置き土産として、平成30年に党がまとめた「改憲4項目」の見解を引き継ぎ、現行9条を維持した上で「9条の2」を新設して自衛隊を明記。さらに大災害など緊急事態での国会議員の任期延長と、政府の権限を一時的に強める「緊急政令」の導入を可能にする案を軸とする論点整理を行った。

 改憲4項目とは、①自衛隊の根拠規定の明記②緊急事態条項の創設③参院選の合区解消④教育の充実。

 ①の9条改正としては、第9条の文面を一部変え、その次に9条の2を追加。
 9条の2
 (第1項)前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
 (第2項)自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

現行憲法9条と、9条の2追加と

 これだけでは分からないので、現行憲法9条の条文も記す。
 第二章 戦争の放棄
 第九条
 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 2前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

自民党による「日本国憲法改正草案」は…

 岸田総理の新総裁への引継ぐべく論点整理の中の憲法9条に関しては、9候補はほぼ一致した方向性とも言われているが、石破氏の場合、異なる展開となっている。

 憲法改正については、平成24年の自民党による「日本国憲法改正草案」では、前文の部分からかなり多くの部分で改正が提案されていており、びっくりした覚えがある。前文まで入れるとかなり長くなるので、9条の部分だけ記したい。

「戦争の放棄」が「安全保障」、第九条の三も追加

 第二章「戦争の放棄」が「安全保障」とされ、さらに次の第九条の二と第九条の三が追加されている。

◇ ◇ ◇

 第二章 安全保障
 第九条
 1日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。
 2前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。

 第九条の二
 1我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
 2国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
 3国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保す
ために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
 4前二項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。
 5国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。

(領土等の保全等)
 第九条の三
 国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。

◇ ◇ ◇

 今の自民党総裁選で、議論されている憲法9条改正だが、安倍総理の時代から「自衛隊」明記ではなく「国防軍」が明記されている。石破氏の言う「国防軍」と同じ意味なのかは分からないが、かなり踏み込んだものだ。

集団的自衛権行使や反撃能力の保有

 また、自民党「憲法改正推進議員連盟」(衛藤征士郎会長)は今年6月、憲法9条改正を含む独自の改憲条文案を取りまとめ、戦力不保持などを定めた9条2項を削除し「日本国は、わが国の平和と独立を守るため、自衛隊を保有する」と明記した。

 私たち国民としては、これら議論に対してどう対応すべきなのだろうか。

 この欄で4月から5月にかけて、岸田内閣が令和4年12月に「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の安保三文書を閣議決定され、反撃能力の保有を明記、その方針が確定した…ということなどを書いてきた。

 今一度、平成24年の自民党による「日本国憲法改正草案」、そして安倍政権での平成28年施行の集団的自衛権行使を可能にする「国際平和支援法」と「平和安全法制整備法」、さらに令和4年の反撃能力の保有が明記された「安保三文書」など、詳しく知るには時間が足りないかもしれないが、今、この日本という国が、どんな国に生まれ変わろうとしているのか、その流れだけでも知り、新しい総裁が誰になるのか、自民党員だけでなく一国民として注視していくべきだと思う。

わたしたち国民こそが問われているとき

 集団的自衛権行使が可能になり、反撃能力の保有が明記された中で、自衛隊の実践的な訓練や他国との実弾を使った合同演習なども行われ、基地等も整備強化されていく。

 国や自衛隊の役割があり、いわば実質的に戦争のできる国に歩み出し、それでは国民の立ち位置と役割は何なのか…ここ数回この欄で書いているように、わたしたち国民こそが問われているときなのだろう。(米永20240918)

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