2025年09月11日 10時34分
《大隅点描 》
ノヒメユリ咲く~民俗学的価値ある植物
ノヒメユリ(ユリ科)は、九州から沖縄にかけて分布し、山地の丘陵草原に生える。
茎高は50㌢から150㌢に成長するが、他の草の高さに比例して成長する遺伝的特徴を持つ。

つまりノヒメユリは倒れないように他の草本に寄り掛かる習性があり、したがって花も大きくならず、径約3㌢とユリ科の中では最小で花弁は強く反り返る。
夏の強烈な日差しを好みながらも橙赤色な花は、なぜか下向きに咲く。
お盆の頃に咲くので、盆花として知られ、切り花にして仏壇、墓参り用に利用されるが、昔の女の子は、紙飾りに利用し遊んでいた。
オキナグサ(オネコ)と共に民俗学的価値がある植物である。
しかし、こうした古くからの丘陵草原は牧草地として利用されなくなり、草原とともに育んだ貴重な草花も共生力を失い、絶滅へ向かっている。
ノヒメユリの自生する南大隅町の広大な野尻野草原も牧草狩りに利用される和牛農家1軒のみとなり、広大な草原全体ではメダケの竹林化が目立っている。
ノヒメユリの個体減少に伴い、国(環境省)の絶滅危惧ⅠBに指定されている。
大隅の自然、歴史研究
坂元二三夫