2025年05月21日 19時03分
《大隅点描 》
キツリフネ咲く~生命力も強く放置すると群落習性示す
キツリフネ(ツリフネソウ科)は、北海道から九州にかけて分布する1年草で、花期は8月から10月にかけて開花するとされる。
しかし鹿児島県大隅半島に分布するものは、5月上旬である。
保育社刊の植物図鑑では、開花は6月となっており、5月開花は、これに近いもので、南に下るほど開花が早まることがわかる。

茎の高さは、50㌢前後、この茎に青葉を向きを変えながらつけ、この葉腋に長い花柄が出て先端に花つぼみをつける。
のちはじけて、風船状にふくらみ、写真に見るように船を釣り(吊り)下げたように、それも不思議に花の重さで葉の下に位置するように定着する。
その花の形が面白く見ているだけでも楽しく、青葉に浮かぶように黄色の花が目立ち、まるでノアの箱舟を連想させる。
1個の花の命は4日間であるが、1株に次々と花をつけ1ケ月は楽しむことができる。
このキツリフネは、鹿児島県では絶滅したとされるが、大隅半島の菱田川中流部の本流、枝流は姶良カルデラ起源の凝灰岩が露頭し、湿地をおびやすい雑木林下に分布するが個体は少ない。
一方で本種は1年草でありながら種子の放出は豊かで生命力も強く、放置すると群落習性を示す。
おそらく県内で絶滅した理由には、自然消滅ではなく、禅僧が有毒である点が有害として人の手により取り除かれたと推察される。
このツリフネソウ属は、日本に4種、世界に600種が分布され、そのキツリフネはスエーデンの生物学者、リンネによて属名種別に分類され、1733年にツリフネソウ属の最初の7種のうちリンネの目に留まった1種である。
大隅の自然、歴史研究
坂元二三夫