2025年05月31日 11時44分

《大隅点描 》

ツクシイバラ咲く~日本の原種ノバラを大切にとの思い

 ツクシイバラ(バラ科)は、九州と四国のみに分布するノバラの野生種。
 大きな円錐花序に数多くの花がつき、マント状になって咲き誇り染まる。

 花は径4㌢と大きく鮮やかな帯紅色で香りがあり、日本ミツバチが群れるように訪花する。
 花1個の命は3日間で夕方に花を閉じて朝また開き、のちに淡紅色から白色になり落下し種子へと移行する。

 写真に見るように花序の軸、花柄、花床筒、萼片には目立つほどに紅色繊毛が密生する。
 葉は7-9枚の奇数羽状で倒卵楕円形で頂小葉は倒小葉より少し大きい。
 小葉の葉身は深緑色で光沢があり、長さ3-3・5㌢、幅1-2㌢が平均で極端に大きいものは長さ6㌢、幅2:8㌢で、これは稀である。

 花が終わり新しい枝が大きくなる頃に大きな葉をつける性質があり、これはノバラも同じである。

 一方植物図鑑では、小葉の裏側に毛が生えると記されているが、大隅産に限っては毛は生えない。ただしノイバラに葉裏に毛が生える。

 戦後までは里山や原野に茂みをつくり、ごく普通に分布しノバラと称されていた。
 しかし現在は里山も原野も姿を消し、これに共生してきたツクシイバラもほぼ全滅状態で、大隅北部、大隅南部の明るい林縁にわずかな分布を見るのみである。
 鹿児島レッドリスト「準危惧」にランクされる。

 写真のツクシイバラは肝付町二股産を根から株分けし自宅庭に5年前に植栽し、通る人の目の保養となるように工夫している。
 日本の原種ノバラを大切にとの思いがある。

 大隅の自然、歴史研究
 坂元二三夫

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