2023年04月17日 17時27分

《オーガニック 》

作る側でなく食べる側から食を考え直すとき

 元農水大臣、山田正彦さんの講演に続いて「タネは誰のもの」という映画を観た。

 種苗法改正で、今まで自分たちで育てた野菜や果物、自分の畑でとれた種を使ってはいけない、自家採種禁止等の内容で昨年4月に公布となった。

以前から自分たちで有機野菜を作っている人たちの間では、大きな話題になっていて、ただ、当初は私も含めてピンとこなかった。

 そんなおかしな法律が成立するはずがない…と。

 私自身は、周りから手伝いをいっぱいもらいながら米を作ったり、有機栽培の畑に行って少しだけ手伝いをして、お裾分けをいただくというくらい、自家消費のためだったので、危機感らしきものは無いに等しかった。

 ただ、この映画を観て、それなりの規模で農作物を作っておられる農家は、自家採種ができずに、よそから買ってくるとなると、その費用が500万円、規模によっては数千万円になるという。

 また、種イモや種株を翌年のために保管している様子が映し出され、それを大事に増やし使って新たに育てていくことで生計を立てていたのに、それが出来ないという。

ただでさえ後継者不足で
何を守ろうとするのか

 それも国が法律で作ったということはとても理解しがたい。種苗法改正と種子法廃止とで地域の農家は、まるで裸にされたようなそんな気分なのだろう。

というより、それでは生活ができない。ただでさえ後継者のいない農林水産業と言っているのに、何を守ろうとしているのだろう。

 分かっている人は分かっているのだろうが、ただ、数年前の私のように、ピンとこない…それも、このことが意識されてなのか、ほとんど報道されないに等しいので、農に関わる人以外、ほとんどの人たちが知らない。(

 特に農に関わりのない女性や子供たちはそうなってしまうのだろう。

 さらに映画の中で、自分たちが今までずっとやってきた、この土地にあった種こそが、その土地の中で伝統野菜的においしさや栄養を保ってきたのだろうが、「自分たちで育てた種でなくて、どこかよそから来た種で何ができるのだろう」というような憤りの声を発していた。

 その裏には、F1(一代限りの品種)だけでなく、遺伝子組み換え食品やゲノム編集された作物の影がちらほらするという。

 私たちはこれまで農薬や化学肥料がいっぱい使われた農畜産物を食べてきて、アレルギーや様々な障がいの一因ともいわれ、今の発達障がい等の要因も、様々な実験で少しずつ分かってきつつあるらしい。

何が豊かなのか
豊かさはいずこへ

 しかも日本の残留農薬の基準はとても甘く、これに加えて遺伝子組み換え食品やゲノム編集された作物がどんどん出てきたらどうなるのだろう。

 まだ昭和生まれの人たちは自分の代では、そこまでないと言われ、2代、そして3代、4代と続くと、そこに何らかの障がいが出、奇形とかに繋がってくるということも言われているようだ。

 この大隅半島は、山々に入るとその豊かさをすごく感じる。食も豊かと言われるが、この田舎でも実際私たちがスーパーで全国から来た季節感の無い野菜を買ったりしていて、果たして豊かとは何なのだろう、疑問に思うことも多い。

 国が進めるスマート農業とかを否定はしないが、一方で自分たちで食べる、特に子供たちが口にする食材は、しっかりと自分たちの手、自分たちの思いが入ったものでないとならない、そんな思いの人たちが、私の周りにはどんどん増えてきている。子供たちの未来をこの大人たちが崩しているようで心が痛い…と。

 この豊かな大隅半島に住んでいるからこそ、何が豊かなのか、作る側でなく食べる側から、食というものを根本から今一度しっかり考え直してみるときになったのだろう。特に子供たちのために…。(米永)

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