《おおすみ雑記 》
その地域らしさや豊かさが五感で感じられる農法、生き方…
前々回、この欄で肝付町川上のことを書いた。
自然に触れる現地調査や金弦の森巨木ナンバリングでは、巨木を探し登山道から獣道、沢沿いを深く入り込んだりし、そこで自然の豊かさ、その懐の深さを知り、そこで週末農業をしたいと古民家を探したこともあった。
写真=川上でホウキタケや四方竹㊧ 山太郎ガニ㊨
一方で高隈山系では、一番ポピュラーな登山ルートが、鳴之尾林道を車で5合目まで行きテレビ塔下から御岳へというコースだが、駐車場が余りないので、もっと多くの人たちがこの大自然に触れてもらいたいと麓からの登山、祓川の瀬戸山神社付近に車を停めてのルート。
また、大隅湖の広い駐車場から天狗像のある盆山を通ってのその時に命名した天狗古道コース、登山道として整備されてなかったが、明治時代の古地図を参考にして地形図を見ながら道なき道をたどっていった際に、その森の本当の豊かさを知った。往復7~8時間という健脚コースだ。
南隅の稲尾山系では、標高930mから200mずつ降ったそれぞれの地点で、10m四方を囲み、その中にある植物をすべて記録していく植生調査にも同行し、それぞれの山に奥深く入り、大隅半島の照葉樹の森に魅了された。
特に、天狗古道コースでは、途中沢づたいをずっと歩いたとき、どれだけの数があったのだろう、炭焼き窯の跡をいくつも目にした。
この森がその地域の人たちの生活にどれだけ関わっていたのだろう…そう感じながらのコースづくりだった。
また、佐多辺塚でその昔、幻の滝、今でいうウオータースライダーのような滝があったので、それを探そうという探検に取材も兼ね同行したこともあった。
川、沢づたいに進んでいくので、ここでも、多くの炭焼き窯跡を発見した。
昔見た記憶があるという年配の方と一緒に探検したが、残念ながらその滝は見つからず、本当に幻の滝のままになっている。
山の奥深く入れば入るほど、その豊かさを感じる。
そういえば村落共同体等での入会権があったな…
その時そういえば、大学の民法で入会権(いりあいけん)というのを習ったなと思い出した。
入会権とは、村落共同体等が、主として山林原野において土地を総有などし、伐木・採草・キノコ狩りなどの共同利用を行う慣習的な物権。
入会権の客体たる土地を入会地といい、入会権の帰属主体としての村落共同体を入会団体ないし入会集団という。
本で読んでいたときは、へえーそんな権利、今でもあるのかなと思っていたが、実際、山深く入ってみると、地域の人にとっては大事な権利であり、それも縄張り的に村落共同体による慣習的な物権として、その地域の中で山奥から里山でのルールがちゃんとあったのだろう。
それを守りながら山の豊かさ、その恩恵に預かっていたのだろう。
山奥深く入り込んだ経験があるので、古民家を探したときは、五右衛門風呂や竈、囲炉裏が残っているところは無いかなといろいろ当たってみたが、囲炉裏はあるにしても、さすがに五右衛門風呂と竈はなく、この3点セットが揃っているところは無いのかと諦めた。
本当の里山の豊かさ、それは…
そしてちょうど川上地区で大隅照葉樹の森プロジェクトふれあい調査をしているころ、2013年に藻谷浩介著「里山資本主義」という本が出版され、興味深く目を通してみた。
海に囲まれていながらも山国でもあり、全国いたるところにある里山に、実際住んでみたり、ライフワークのようにして、その豊かさを感じたりすることなのかなとも思ったが、エネルギー革命や林業を中心とした話も多く、あまり身近に感じるところが思ったより少なかった。
ちょっと視点が違うかもしれないが、まだ2015年に出版され、最近読んだのだが高野誠鮮著の「ローマ法王に米を食べさせた男」のほうが面白かった。
すごく前置きというか、前振りが長くなったが、そうした体験をし、特に川上では調査に参加したり、お米を作らせてもらったりでほぼ1年間は、かなり密に関わらせてもらったので、里山の豊かさというものを体感。
古民家探しも実は、川の近くで借りることが決まって、地域の人たちからイノシシ肉やダンマエビ、山野草の天ぷらなどで歓迎してもらい、盛り上がっているところへ自然のホタルが部屋近くまで舞い込んできて感激、これからというときに所有者の親戚からちょっとちゃちゃが入り断念。
少し視点を変え集落の機能を考えてみる
その前後も行く度に、地域のいろんなものを食べさせてもらったり、時々は地域の人たちの家に泊めてもらったりしてきた。
なので中山間地域で、パーマカルチャーでいう生態学的に健全で、経済的にも成り立つ一つのシステムとか言ってみたり、中山間地農業ルネッサンス事業での複数の集落の機能を補完する農村RMOの形成について、少し視点を変えて入会権的な発想で集落の機能を考えてみたほうが現実的かなと思ったりもしている。
今現在、中山間地区に住んでおられる一部の方々にはとても失礼かもしれないが、自然豊かなその場所で、今の慣行農法でなく、どこも同じような作物ということでなく、もっとその地域らしさや豊かさが五感で感じられ、その独自性がメッセージとして伝わる何かやり方があるような気がしている。
そこに意識して国の予算も入れ込む、そうすると大げさだが、自給率アップにも繋がっていくのでは。
話が少し飛ぶが、ブラジルでは、「小規模家庭農家」と「学校給食」が結びついて、農家と地域がいきいきしているという。(米永20241103)